復興庁の存続 検証し教訓を次に生かせ

西日本新聞 オピニオン面

 存続するとしても、単なる「現状維持」では済まされない。これまでの取り組みで何が足りなかったのか。検証して教訓を次の復興政策に生かすべきだ。

 2021年3月末に設置期限を迎える復興庁が21年度以降も存続する方向となった。与党の自民、公明両党が政府に現体制のまま存続させるよう安倍晋三首相に提言し、首相は「要望に沿って対応する」と約束した。

 復興庁は首相直属の機関で専任の閣僚が置かれ、復興交付金の配分や被災自治体と関係省庁との調整を担う。11年12月に成立した復興庁設置法は災害発生から10年を復興に要する期間と定め、司令塔となる復興庁の設置期限を20年度末としていた。

 しかし、東日本大震災から8年余を経ても約5万人が避難を余儀なくされている。被災者の就労支援や心のケア、風評被害への対応など課題は残ったままだ。「道半ば」の復興を後押しするため、政府と与党は足並みをそろえたと言えるだろう。

 政府と与党には改めて注文したい。巨大地震と大津波、それに原発事故が重なった未曽有の複合災害だった事情は理解するが、復興庁を存続させるという判断は、当初予定していた期限内に復興を成し遂げられなかったことを意味する。

 それはなぜか。省庁の縦割り行政を廃するという本来の役割は果たせたのか。「被災地に寄り添う」と繰り返す政治はリーダーシップを発揮できたのか。しっかり検証して率直に国民へ説明してほしい。そうでなければ、復興に要する新たな延長期間や財源など復興庁存続の議論は説得力を持ち得ない。役所と大臣を今のまま残せばいい-という単純な話ではあるまい。

 もう一つの重要な論点は、全国的な視点で防災・減災から災害の復旧・復興まで一元的に取り組む政府機関設置の問題だ。

 地震、台風、豪雨など自然災害の脅威は一段と増してきた。南海トラフ巨大地震や首都直下地震なども想定され、防災体制の強化は喫緊の課題である。

 復興庁の後継組織として、復興庁と内閣府や内閣官房などに分散する防災関連部署を統合して常設の新省庁を置く案があった。全国知事会は東日本大震災の経験を踏まえて「防災省」の設置を提案しており、昨秋の自民党総裁選で、石破茂元幹事長が争点の一つとして提唱したことでも知られる。

 防災体制の強化や司令塔機能の一元化は今回の与党提言にも盛り込まれている。東日本大震災からの復興を確実に加速するとともに、各種の災害で得られた貴重な体験と教訓を生かして防災体制を強固にしていく。政府の最優先課題の一つである。

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