「これは夏休みなどに国へ帰る誰でもが一様に経験する心持だろうと思うが」と、夏目漱石は「こころ」に書いている…

西日本新聞 オピニオン面

 「これは夏休みなどに国へ帰る誰でもが一様に経験する心持だろうと思うが」と、夏目漱石は「こころ」に書いている

▼「当座の一週間位は下にも置かないように、ちやほや」ともてなされる。けれど次第に家族の熱が冷め、「仕舞(しまい)には有っても無くっても構わないもののよう」に粗末に扱われがちになる―。確かにわが家も、と身に覚えのある方も多いだろう

▼小説の発表は1914(大正3)年。電話がある家庭は珍しく、声さえめったに聞けない時代のこと。久しぶりの家族再会の喜びは現代の比ではなかったと思うが、人の心根とは百年前もそう変わらないものらしい

▼片や、政治家のお盆は感傷に浸る時間もなさそうだ。山口県にお国入りした安倍晋三首相。新聞に載った13日の動静は「支援者宅。弔問」が分刻みで連なっていた。夜は花火大会を観賞し、夏祭りにも顔を出している

▼午前8時52分の墓参りに始まり、帰宅は午後11時7分。前後の両日も同様に支援者宅回りである。御年64歳とまだまだお若いが、猛暑下にこの日程。官邸に戻ってむしろほっと一息、かもしれない

▼お盆休みを終え今日から仕事再開の人もいるだろう。とはいえ今週は休み疲れもあり、本調子の出ない1週間である。そしてこれはクニから帰した誰でもが一様に経験する気持ちと思うが、無事に送り出した安堵(あんど)と、賑(にぎ)やかな声が消えて早くも寂しさ募る1週間ともなる。

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