【車いすで街に出よう】 関根 千佳さん

西日本新聞 オピニオン面

関根千佳(せきね・ちか)さん=ユーディット会長同志社大客員教授 拡大

関根千佳(せきね・ちか)さん=ユーディット会長同志社大客員教授

◆お店へ、屋台へ、国会へ

 母が好きな福岡市内のうどん屋さんへ久しぶりに行った。母が車いす生活になってからは初めてだ。入り口の段差は少ないので大丈夫と思ったのだが、椅子席は固定で、車いすが入れなかった。奥の座敷の掘りごたつに、何とか移乗して、座ることができた。

 母はうどんを美味(おい)しそうに食べた。だが、壁にもたれての姿勢保持が難しく、少し疲れたようだった。家で療養していたときは、出前を頼んでいたものね。お店に入るのは久しぶりだったから、店のバリアフリー具合は分かっていなかった。ごめんね。

 母と外でご飯を食べたいと思い立っても、福岡では一緒に過ごせる店を見つけるのが難しい。ネットで見て「ステキ!」と思っても、入り口に段差があったり、エレベーターのない二階だったりする。行きたい場所、ではなく、行けるかどうかを優先しなければならないのだ。

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 だから、最近、東京で出版された「首都圏バリアフリーなグルメガイド」(交通新聞社刊)というムック本には参った。車いす、アレルギー、やわらか食、ヴィーガン(完全菜食主義)など、さまざまな配慮のある店がいっぱい。がっつり肉も、ラーメンも、もんじゃ焼きも。表紙には、「すべての人に、おいしいお店」とのコピーが躍る。

 写真はすごく美味しそうだし、すぐにでも行きたい店ばかり。デートにも女子会にも使える。トイレの写真が巻末にそっと載っているのも気配りだなあ。本の字が小さいのがシニアには気になるが。

 こんな本が、福岡にも京都にも、いや日本中にあればいいのに。先日も京都で、大学院の授業打ち上げのために、「アクセシブルな和食店を探す」というお題に、院生が頭を抱えていた。授業に協力してくれた車いすユーザーと一緒に行けて楽しめる店だ。

 伝統的な和食店は、物理的にも「敷居が高い」のだ。結局、ホテル勤務の先輩が探してくれたが、車いすで停められる駐車場、そこからのアクセスルート、中に入ってからの動線など、確認すべきことは多かった。

 福岡では、ユニバーサルデザイン(UD)にユニバという点数をつけて店を紹介してくれるサイトがあり、助かっている。また、福岡の誇る屋台文化もUDだ。最初から車いすでも入れるし、複数台入りたいならベンチを動かせばいい。メニューの多言語表記も増えている。

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 みんながどんどん、街へ出ていかなくては、社会は変わらない。今夏の参院選で、比例代表のれいわ新選組や、岩手選挙区から、障害のある議員が当選して、国会のバリアフリーは前進した。

 これまでも、車いすの八代英太氏や視覚障害の堀利和氏が議員になって、国会は改善された。ニーズのある人が登場すれば、対応は進む。パソコンを使ったコミュニケーションも、就労時のヘルパー派遣も、これまでずっと請願しても動かなかった制度が、当事者を前にして、やっと動きだしている。

 九州の議会はちゃんとUDになっているかな? 12日の本紙報道では、各県や政令市はハード面の環境整備を進めている一方、ソフトやサービスなどの情報保障については手探り状態のようだ。これからも、多様な議員や傍聴者は増えるだろう。

 私たちも、お店に、屋台に、議会に、国会に「行きたいから」という理由で行こう。車いすでも要介護でも。そういうお客がいるんだと知るところから、街は変わる。国会が変わったように、日本が変わるかもしれない。

 母と一緒に、いろんなお店に行きたいな。お母さん、次はお寿司(すし)屋さんがいい?

 【略歴】1957年、長崎県佐世保市生まれ。九州大法学部卒。81年、日本IBMに入社。ユニバーサルデザインの重要性を感じ、98年に(株)ユーディット設立。同社社長、同志社大教授など歴任。著書に「ユニバーサルデザインのちから」など。

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