香港デモ長期化 「天安門」の再来許されぬ

西日本新聞 オピニオン面

 香港で市民による抗議デモが長期化している。大規模デモの開始以来2カ月以上たった現在も、勢いは衰えを見せない。デモを敵視する中国政府の介入が懸念される事態となっている。

 一連のデモのきっかけは、香港政府が中国への犯罪容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改正案を議会に提出したことだ。中国政府に批判的な活動をした香港市民が中国側に引き渡されかねない、と不安が広がり、抗議活動が始まった。

 活動の高まりを受け、香港政府トップの林鄭月娥(りんていげつが)行政長官は6月中旬、改正案を事実上廃案にする方針を表明したが、デモの主体となっている若者らは納得せず「改正案の完全撤回」や「行政長官選挙の民主化」などを求めて活動を続行している。

 抗議活動の長期化と過激化の背景にあるのは、香港の「中国化」を進める中国の共産党政権と、それに歩調を合わせる香港政府に対する市民の不満だ。

 1997年に香港が中国へ返還された際、中国は返還後50年「一国二制度」を維持すると約束した。しかし習近平政権は、行政長官選挙から民主派を事実上排除するなどして「一国二制度」の骨抜きを図っている。

 今回のデモに対し、中国当局は香港に隣接する広東省深〓(〓は「土へん」に「川」)に武装警察を集結させ、デモ鎮圧訓練を開始している。「武力鎮圧もあり得る」と見せつけることで、香港市民を心理的に圧迫する狙いだろう。

 しかし、この構図で誰もが思い出すのが、89年の天安門事件だ。北京での学生たちの民主化要求デモを共産党政権が人民解放軍を使って鎮圧し、多数の死者が出た。中国政府はこの弾圧を現在も正当化している。

 香港で「天安門事件」と同様の事態を起こしては絶対にならない。トランプ米大統領も「天安門事件のような暴力的事態となれば(貿易協議での)取引は困難になる」とけん制した。

 中国が香港のデモを武力弾圧すれば、天安門事件の時よりもさらに、国際社会における中国の地位は急低下し、それに伴う経済的な損失も避けられない。中国はこのリスクを理解し、介入を自制すべきである。

 この事態を前に、香港政府は目先の混乱対応に追われ、問題解決の当事者能力を失っているようだ。香港政府は中国政府の代理人になるのではなく、香港社会の政治的自由の維持を求める市民側に立って中国政府と交渉し、着地点を探るべきだ。

 国際社会も危機を座視していてはならない。日本を含め関係国は中国政府に対し、武力鎮圧で失うものの大きさを説き、人道的な方法で事態を収拾するよう働き掛けていく必要がある。

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