交流延期 残った「希望」 中野 慧

西日本新聞 オピニオン面

 日韓関係が悪化している今だからこそ、草の根の交流が大切だ。主催者たちも分かっているはずだが、各地で日韓交流事業の中止や見送りが続いている。かくいう私もその交流を延期した一人だ。

 私の所属するこどもタイムズ編集部は、小中学生のこども記者とさまざまな現場に出向き、取材の成果を「もの知りこどもタイムズ」面で記事にしている。この夏は韓国の釜山市を訪れ、文化や歴史について取材する計画で、春ごろから準備を進めていた。

 しかし日韓の政治対立が深刻化。実施の最終判断をする7月末時点であらゆる事態を想定し、小学生を預かる編集部としては現地取材を見送らざるを得ないと判断した。

 企画には第9期こども記者から大勢の応募があり、選考した結果、小学5、6年生4人の参加が決まった。2泊3日の旅行、それも初めての海外渡航だ。参加者の一人は応募作文に「韓国の人たちは私たちと姿がとても似ている。だけど、日本とはちがった文化がたくさんあることが不思議で興味を持った」と異文化交流への期待をつづっていた。取材先の釜山の皆さんも、こども記者が来るのを心待ちにしてくれていたので、今回の判断は胸が痛んだ。

 子ども関連の交流事業を中止するなどした日本側の自治体や民間団体に聞くと、「韓国の側が、日本人との交流を周囲から批判されるのを不安視していた」と話す。

 日本の側も事情は同じだろう。紙面に日韓の友好に関する記事が載ると、「韓国の新聞か」「国賊」などと非難の声が届くこともある。われわれ大人の記者は、どんな批判にも向き合う覚悟だが、こども記者の記事が、そんな声にさらされる事態は、やはり避けなければならない。

 同時に交流が途切れることが、相手国を「怖そう」「なんか嫌だ」と思う空気を増幅させてしまいそうで、もどかしい。韓国が日本統治から解放されて74年、国交正常化から54年。いまだに過去の負の遺産があつれきを生み、そのしわ寄せで両国の子どもが互いを知る機会を奪われていることが残念でならない。

 釜山に行く予定だったこども記者の一人は、保護者に「将来、政治家になって国同士のけんかを止めたい」と話したという。悶々(もんもん)とする私の何枚も上手を行く「大人」の姿勢に救われた思いだ。近々、釜山に行く。取材を予定していた人々に会い、この「希望の言葉」を伝えるつもりだ。

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 ▼なかの・けい 東京都出身。2009年入社。都市圏総局、筑豊総局、編集センターを経て、こどもタイムズ編集部。

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