理解は対話の積み重ねから 「同性婚の父」 米のウォルフソン弁護士 福岡市で会見 社会の沈黙が大きな代償に

西日本新聞 くらし面

 同性カップルが婚姻の自由を求めて全国4地裁で裁判を起こしている。世界に目を向けると、28カ国・地域が同性婚を容認。中でも米国では、連邦議会が同性婚を認めない法律を制定、各州の最高裁で判断が分かれるなど曲折の末、連邦最高裁が2015年に全ての州で同性婚を認める判断を示した。この運動に30年以上関わり「同性婚の父」と称されるエヴァン・ウォルフソン弁護士(62)=ニューヨーク市=が6日、福岡市で記者会見し「裁判だけでなく市民の対話、企業や政治への働き掛けといった行動を積み重ねることで、初めて実現できる」と呼び掛けた。

 ウォルフソン氏は同性婚を巡る1990年代のハワイ州の裁判で原告代理人を務めた。州最高裁は93年、「同性カップルに結婚の権利を認めないのは平等原則に反する」として全米で初めて州憲法に違反するとの判断を示した。これに保守派が反発。同性婚を禁止するため州憲法が改正された。連邦議会も96年、婚姻を異性間に限定する「結婚防衛法」を制定するなど、反動の波が一気に広がった。

 「裁判に勝つだけでは戦略として不十分」として、ウォルフソン氏は2003年、同性カップルの婚姻の自由に理解を求めるキャンペーンを展開するNGO「Freedom to Marry」を創設。市民の対話を重視し、同性愛者やその家族、友人たちがなぜ婚姻を必要とし、婚姻できないことでどんな苦しみがあるかという個人の物語を発信した。96年の米国の世論調査で同性婚容認はわずか27%だったが、2010年には過半数に上った。

 「婚姻する権利は人の自由に内在する基本的権利であり、同性カップルからその権利と自由を奪ってはならない」。15年6月26日、連邦最高裁は同性婚を全ての州で認める判決を出した。「全ての人に、婚姻の自由を」との目標を掲げたウォルフソン氏らの活動が、実を結んだ瞬間だった。

 日本で電通ダイバーシティ・ラボが18年、20~50代の6229人を対象に実施したインターネット調査では、78・4%が同性婚の制度化に「賛成」「どちらかといえば賛成」と回答している。原告支援者の招きで来日したウォルフソン氏は、福岡アメリカンセンター(福岡市中央区)での会見で「多くの人が同性婚を支持していることを、多くの人が知らないことに問題がある」と指摘。同性愛や同性婚について議論を避けがちな日本社会について「沈黙によって当事者たちが苦痛を感じ続けるという大きな代償が生まれている現状を、克服しなければいけない」と忠告する。

 「伝統的な家族観が壊れる」として同性婚に慎重な意見もある。これに対し、ウォルフソン氏は「婚姻は、家族が互いに責任を持ち関係を強固にする制度。同性愛者を排除するのではなく取り込むことは、むしろ家族の結び付きを尊重する伝統的価値観を強めることになる」と説く。

 同性婚を認めることは、人権の観点だけでなく、経済活動にとってもメリットが大きいという。約千社が加入する在日米国商工会議所は昨年9月、性別によらない婚姻の平等を確立するよう意見書で日本政府に提言した。「性的少数者の婚姻が認められることで、国際的なレベルの人材獲得において他国と対等な条件で競争できる」との内容で、今年8月までに43の企業・団体も賛同している。

 同性婚を法的に認める動きは2001年以降、欧州を中心に広がり、台湾は今年5月、アジアで初めて合法化した。国内では婚姻を異性間に限ることの違憲性を問う裁判が進行中で、福岡市在住の男性カップルは9月にも福岡地裁に提訴する。ウォルフソン氏は「壁を簡単に乗り越えられた国は一つもないが、日本は多くの国の経験を生かせる。日本で実現すればアジアの国々を触発することができる」とエールを送る。

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