本土の報道 沖縄の失望 吉田 賢治

西日本新聞 オピニオン面

 あの日は沖縄県宜野湾市内で取材中だった。イベント会場の内外で、ざわめきが起きた。「米軍ヘリが沖縄国際大に墜落したらしい」。市職員から耳打ちされ、事態の重大さに身震いし、動揺を抑えながら現場へと急いだ。15年前の8月、13日の午後だった。

 米軍普天間飛行場に隣接する大学のキャンパスに入る。ぐちゃぐちゃに大破したヘリが見え、校舎の外壁は大きな黒いすすで汚されていた。油の焦げた臭いが漂う中、写真を撮ろうと近づくと、米兵から「Get out!(出て行け)」と追い出された。

 墜落地点から住宅地までは20メートルしか離れていない。一帯には大小の部品や、拳大の校舎の鉄筋コンクリート破片が散乱していた。目撃した男性は「爆音で見上げると頭上でプロペラの一部が外れ、ヘリがきりもみ状態で降下して爆発、火柱が上がった」「爆弾を積んでいれば大爆発すると思い、赤ちゃんのいる自宅に走った」と語った。乗務員以外にけが人が出なかったのは、まさに奇跡だった。

 戦後の沖縄で米軍機に絡む事件は数多い。近年でも2016年12月に名護市の海上にオスプレイが不時着して大破。17年10月にも大型ヘリが東村の牧草地で炎上した。同12月にはヘリの窓枠が小学校運動場に落下している。

 墜落事故を取材した本土出身者として、以後、ずっと気に掛かっていることがある。本土に本社がある報道メディアに対して、沖縄の側が抱いた違和感である。

 関西大社会学部メディア専攻の吉岡至教授は、沖縄の地元紙2紙が当日から号外を出して大々的に報じたのに対し、全国紙の扱いが比較的小さかったと指摘した。

 あの日はアテネ五輪の開幕日で、プロ野球巨人の渡辺恒雄オーナー(当時)がスカウト活動に絡む不祥事で引責辞任というニュースも飛び込んできた。吉岡教授は当時の沖縄側の声を踏まえ「本土メディアにとって、ニュースバリューの低い『異国』の出来事としてとらえられていた観がある」と論じている。

 本紙は1面と社会面で扱ったが、ここで、全メディアが沖縄2紙と同じ扱いをすべきだった、と言いたいのではない。沖縄の問題に限らず日々のニュースの価値判断は新聞、放送局ごとに当然異なる。ただ、それは沖縄2紙のように基地被害の歴史を踏まえた上での価値判断だったのか。

 沖縄側が当時感じた本土への失望は今、地元の民意に反して強行される普天間飛行場の辺野古移設問題などで、より強まっているのではと懸念する。 (大牟田支局長)

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