差別 くじで人生追体験 同和地区出身者ら8人から選択 春日でイベント

西日本新聞 社会面

被差別部落出身者ら8人の写真と紹介文が並ぶ「〝MyStory〟s」。来場者は手前のテーブルにあるくじを引き、その人の半生をたどっていく=福岡県春日市 拡大

被差別部落出身者ら8人の写真と紹介文が並ぶ「〝MyStory〟s」。来場者は手前のテーブルにあるくじを引き、その人の半生をたどっていく=福岡県春日市

※福岡県の人権問題に関する県民意識調査。数字は%。四捨五入のため必ずしも合計は100%にはならない ※福岡県の人権問題に関する県民意識調査。数字は%。四捨五入のため必ずしも合計は100%にはならない

 若い世代の被差別部落出身者ら8人の半生を紹介するイベントが、福岡県春日市のクローバープラザで開かれている。重苦しい話になりがちな差別と人権について、くじ引きで選んだ1人の幼少期から現在までを写真と文章で追体験してもらうというユニークな内容だ。会場を訪ねた。

 「“My Story”s」と銘打ち、県人権啓発情報センターなどが主催。会場入り口には8人の大きな写真が並ぶ。被差別部落出身者やその家族などだ。東京や大阪、福岡などに住む38~47歳。7人が実名を明かしている。

 テーブルに置かれたくじを引き、同じマークが記された紙を裏返すと、「上川多実」さんと名前が書かれていた。両親が被差別部落で生まれ育ったという東京都在住、39歳の主婦。幼少期や青年期、恋愛、仕事など時期やテーマごとに展示された写真を見ながら、説明文をめくっていく。

 「通っていた学校は同和教育がなかったので、周りが部落について本当に知らないんです」

 被差別部落の話をすると「ブラック?」と聞き返された子どもの頃。将来への不安を漏らしても「被害妄想じゃないの?」と周囲に言われた青年期。周りとのギャップを感じ、「この頃が一番つらかったです」。

 心配していた結婚。交際を始めてすぐ自らの出身を伝えると、夫は理解を示してくれた。「とてもうれしかったし、すごく安心しました」。今は子育てをしながら、同和問題を考えるウェブサイトを仲間と運営する。「差別や人権は難しいイメージがあるかもしれないけれど、向き合うことで人生を豊かにしてくれる」と締めくくられていた。

 三重県の女性は交際相手の母親に結婚を反対された経験を明かし、東京都のコーヒー店店長は同和問題を題材としたイベントで登壇した後、インターネット上で個人情報がさらされたという。8人が人生のさまざまな場面で同和問題と向き合ってきたことがうかがえた。

 同センターによると、差別の歴史を真正面から振り返る内容が目立った従来の企画は難しい印象になりがちだった。若い世代に同和問題を知ってもらうにはどうしたらいいか、ウェブで情報発信している上川さんらのグループに相談。「すごろくみたいな感覚で、ドキドキしながら問題に触れられないか」と話し合い、この展示方法を考えたという。

 同センターの森部広道副館長は「一人一人の体験や思いをリアルに感じることが、同和問題の身近さを知ることにつながるはずだ」と話す。9月29日まで。同センター=092(584)1271。

■差別意識なお根強く 福岡県民意識調査

 福岡県が2016年に実施した県民意識調査によると、同和地区の人との結婚を家族や親類から反対された場合、約1割が「結婚しない」と回答した。同和問題を巡る差別意識が根強く残る現状がうかがえる。

 調査によると、子どもが同和地区の人と結婚しようとした時は、4人に1人が「反対だが、子どもの意志が強ければ仕方がない」を選び、「絶対に認めない」は3・5%。家を選ぶ際は、同和地区内を「避けると思う」「どちらかと言えば避けると思う」が計4割を超えた。

 いずれの質問に対しても、2割弱~3割が「分からない」と答えた。

 文部科学省によると、義務教育で同和問題をどのように、どの程度教えるかは学校や教育委員会の裁量。教育の質や量は地域によって濃淡がある。

 県人権啓発情報センターは「十分知らない人が結婚や転居をする際、差別的な表現も目立つインターネットで情報を集めようとして、誤った知識を身に付けてしまう恐れがある」と懸念する。

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