対立拡大、日米韓揺らぐ 対北朝鮮連携に隙 韓国の軍事情報協定破棄

西日本新聞 総合面

 日本と韓国の元徴用工問題に端を発した対立は、輸出規制強化という通商分野の攻防から、安全保障上の協力体制の見直しにまで波及した。韓国政府は22日、日本と軍事上の機密情報を共有する日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を発表。日米韓の安保協力の枠組みに揺らぎが生じ、軍事挑発を繰り返す北朝鮮をはじめ中国やロシアなど周辺国に付け入る隙を与えるとの懸念が高まる。一方で協定の性格上、影響は限定的との見方もある。

 協定破棄は韓国国内でも驚きをもって受け止められた。発表直前まで、複数のメディアは文在寅(ムン・ジェイン)政権が協定を継続する方針を固めたなどと報じていた。

 協定破棄によって日米韓の安保環境が不安定化する懸念は韓国でも根強い。韓国高官が7月下旬、協定を継続しない可能性を示唆すると、日米韓の連携にくさびを打ち込むように周辺国の軍事的な動きが続いたからだ。北朝鮮は以降、短距離弾道ミサイルなどを計6回発射。7月23日には、中国とロシアの軍用機が日韓両国が領有権を主張する島根県・竹島周辺の上空を飛行した。

 文大統領は15日、日本の植民地支配からの解放を記念する光復節の演説で日本批判のトーンを抑え、日韓両国で緊張緩和のサインとの受け止めが広がった。だが、21日の日韓外相会談で日本側から譲歩を引き出せず、韓国世論は強く反発した。

 さらに文政権が強硬姿勢に出た別の理由も取り沙汰される。文氏が法相候補に指名し、次期大統領候補の一人とも目されるチョ国(グク)前大統領府民情首席秘書官に、娘が有名大学に不正入学した疑惑が急浮上。「政権の足元を揺るがすスキャンダルから世論の目を背けるため、協定破棄にかじを切ったのではないか」(韓国政治研究者)というのだ。

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 日本政府は韓国の協定破棄を想定していなかった。22日夜、防衛省で第一報を聞いた海上自衛隊幹部は「当然継続すると思っていたが…」と絶句。安倍晋三首相は官邸からの退出時、コメントを求める記者団に硬い表情で無言を貫いた。

 日本政府は韓国で反日感情が高まる15日の光復節を境に「少し落ち着いた話ができるのではないか」(外務省幹部)とみていた。日本批判を抑えた文氏の演説もあり、岩屋毅防衛相は22日午前の閣議後記者会見でも「(協定)延長に期待している」と楽観的だった。

 協定破棄を受け、自衛隊の制服組幹部は「中国、ロシア、北朝鮮は喜ぶだろう。日米韓の防衛網に穴があいたと映るかもしれない」。自衛隊と韓国軍の関係も「険悪になりかねない」と漏らす。

 静岡県立大の奥薗秀樹准教授(韓国政治)は「協定破棄は朝鮮半島に中国の影響力が増すきっかけになる恐れもある。日本はあらゆるチャンネルを使い、韓国が日米韓の安保協力の枠組みにとどまるよう働き掛けるべきだ」と話す。

 ただ、協定は施行して3年と日が浅く、両国とも同盟国の米国とは情報を共有する。日本の防衛省幹部は「協定は日米韓の強固な関係を周辺国に示すための象徴としての意味合いが強い」として国防上の影響は限定的とみる。 (ソウル池田郷、塩入雄一郎)

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