子規も引かれた燃える赤 福岡・吉富町のケイトウ 

西日本新聞 夕刊

 「鶏頭の十四五本もありぬべし」。俳人正岡子規が、亡くなる2年前の句会で詠んだ句である。

 福岡県吉富町の花農家、賀部正直(かべまさなお)さん(68)を訪ねた折、玄関の花瓶に投げ生けされたケイトウの燃えるような赤を見て、この句を思い起こした。当時、結核で床に伏せていた子規。庭に咲くケイトウの生命力あふれる赤に、心引かれたのかもしれない。

 ニワトリのトサカに似た花形が、名の由来とされるケイトウ。ビロードのような艶のフリルが、ぽわんと卵形にまとまっていて、かわいらしい。

 「ケイトウの魅力は存在感やね」と賀部さん。それでいて出過ぎず、小菊などの白い花を引き立たせる。さらに、水揚げが良く、1週間以上しおれないというのも、うれしいところ。きっと今年のお盆にも、ケイトウを仏壇にお供えした家庭も多かったことだろう。

 栽培が容易で、需要も根強いことから、水稲を栽培していた賀部さんら6人の農家が声を掛け合い、ケイトウ栽培を始めたのは3年前。現在、同町で5万本を出荷している。

 出荷は来月の中旬ごろまで。今年は秋の彼岸の入りが9月20日だから、ぎりぎり間に合いそう。彼岸にはこの世とあの世が最も近くなり、仏様をお祭りするのにふさわしいと、お墓参りをするのが習わし。ケイトウを携え、あの世のご先祖にこちらの息災を伝え、ついでに近況でも聞いていただくことにしよう。

 ▼吉富のケイトウ 福岡県吉富町幸子475のJA福岡京築「築東地区ふれあい市」で3~5本200円前後で販売中。他に小菊などもある。同ふれあい市=0979(25)3570(午前7時~午後6時)。

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