竹製釣り具、熟練の技 時代とともに変化させ

西日本新聞 筑後版

 曲がった約3メートルの竹が、見る見るうちに真っすぐ伸びる。約500度のしちりんの火で1本ずつあぶりながら、大小さまざまな溝がある専用の道具で節を押さえたり、しごいたり。「あぶって軟らかくなった一瞬が勝負。思い通りに伸ばせるようになるまでに10年以上はかかる」。全国でもこの作業ができる職人は数えるほどという。

 竹を使った和ざおを製造する釣具店「つり具の木下」(八女市上陽町上横山)の2代目店主。昭和40年代以降、釣りざおの素材はグラスファイバーやカーボンなどの化学繊維に取って代わられたが、今も竹の味わいや独特の使い心地を求める愛好家は少なくない。

 「竹は魚の動きに合わせてしなってくれ、釣れた時の感触も良い」と特長を口にする。海釣りや川釣り用のほか、関東を中心に釣り堀用のさおを年間約3千本出荷。高級ざおを手掛ける各地の職人に素材も提供もする。

 すべて手作りだ。1本完成するのに半年以上かかる。鹿児島県産のホテイチク(布袋竹)を使用。丸く膨らんだ節は高級感があり、強度も申し分ない。色合いをよくするためバーナーで焼き、半年以上乾燥させて張りを持たせた後、伸ばす作業を繰り返す。部品の接続部に糸を巻いて補強したり、漆を塗ったりして仕上げる。「全国で一番良いさおをつくる」ことにこだわる職人技だ。

 30代半ばで本格的に家業を手伝い始めた。もともと竹1本で作る継ぎ合わせのない延べざおが専門の店だったが、化学繊維製が主流となったことで注文が激減。そこで高級路線に転換した。他の素材と組み合わせられるようグリップなど、パーツごとに製造することで経済的苦境を乗り越えた。

 10年ほど前にインターネット通販を始めると、物珍しさから釣り堀などの依頼が急増。店頭では釣り人から細かな要望を聞き、各地の工業試験場に出向いて竹の加工技術を学ぶなどして改良を重ねた。「時代に合わせて商品を変えてきたからこそ、生き残ってこられた」

 一方で、後継者はいない。竹を切り出す職人が既に1人しかおらず、近いうちに素材が入手できなくなる恐れがあるからだ。弟子入り志願者もいたが、全て断った。

 「あと10年くらい続けられれば良いかな。寂しいけどこればかりは仕方がない」。残された時間、できる限り“日本一の釣りざお”を作り続ける覚悟だ。

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