仮出所者の更生支え10年 北九州自立更生促進センター 職探しに実績

西日本新聞 社会面

開設から10年を迎えた北九州自立更生促進センター 拡大

開設から10年を迎えた北九州自立更生促進センター

同センターの開設反対を訴える古びた看板=いずれも6月、北九州市小倉北区西港町

 刑務所から仮出所した人を受け入れ、社会復帰を支援する全国初の国営施設「北九州自立更生促進センター」(北九州市小倉北区西港町)の開所から10年が過ぎた。当初、地元では開設反対運動が巻き起こったが、これまでに270人以上を受け入れた。職探しのサポートなどで実績を重ねていく中、課題も浮かんでいる。

 家族など引受人がいなかったり、民間の更生保護施設に入れなかったりした仮出所者を対象に2009年6月29日に開所された。定員14人。3カ月間をめどに宿泊場所を提供、保護観察官が生活指導などを行う。

 50代の元公務員男性も入所した一人。30代の頃、飲み会帰りに偶然、知人の不倫現場を見たことをきっかけに、女性宅に侵入し、のぞきを繰り返すようになった。住居侵入容疑で逮捕されて職を失って以降、エスカレートし、女性の体を触った準強制わいせつなどの罪で服役した。

 希望した更生保護施設への入所は断られた。「仕事も、性依存症の治療も本気で取り組みたい」。刑務所まで面接に来たセンター職員に訴え、入所した。

 職員の紹介で性依存症の回復支援施設に通い、工場の仕事にも就いた。「仕事をしている時が一番幸せ。誰かの役に立っていると思える」。今は工場の社員寮で暮らす。「センターに入れて良かった。今の状態を10年、20年と続けたい」

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 再犯者率は4割を超え、上昇を続けている。民間頼みだった仮出所者への支援を充実させようと、国がセンター構想を打ち出したのは06年。候補地のうち、福岡、京都両市では住民が猛反発し、計画は頓挫した。北九州市の場合も、港湾地区の業界団体を中心に反対の署名運動が展開された。

 「泥棒が増えたらどうするんだ、という気持ちだった」。運動に加わった男性(62)は振り返る。センターは住民の不安に配慮し、入所者に携帯電話を持たせるなどの対策を示し、開所にこぎ着けた。飲酒禁止や職員らの送迎なしの外出を許さないなど、民間の更生保護施設とは段違いの厳しいルールも設けている。

 センターによると、これまでに目立ったトラブルは起きていない。周辺10カ所以上にあった「開設反対」の看板は、朽ちて大半が撤去された。男性は今も複雑な思いを抱えつつ「取り組み自体は理解できる。出所した人がちゃんと更生してくれたらいいが」と話す。

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 全てが順調というわけではない。入所者の1割はルールを破って仮釈放を取り消されている。職場になじめず生活に困窮して再犯してしまい、センターに2度入所した人も。「コミュニケーションがさほど必要のない刑務所の方が、社会生活よりも楽だと話す人もいる」(保護観察官)。

 受け皿として限定的である点も課題だ。例えば18年度、北九州のセンターをはじめ、福島自立更生促進センター(福島市)など全国4カ所の国営施設で受け入れたのは計73人にとどまる。厳しい生活ルールが仮出所者に敬遠されているほか、住民に配慮した結果、殺人など重犯罪の受刑者は対象外としたため入所者が限られるジレンマがある。センター関係者は「受刑者全体が減少傾向の中、選定基準に合う入所者を探さねばならない」とこぼす。

 龍谷大の浜井浩一教授(犯罪学)は「入所者を増やすには受け入れ条件を緩和するしかないが、社会の側に元受刑者を受け入れる素地が希薄だ」と指摘。「地域に居場所がないから再犯が起きる。地域社会が自分の問題と捉え、継続的に支援することが重要だ」と話す。

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