街頭ビジョン「音」規制は? 市が許可…実は県条例違反

西日本新聞

 3階建てビルの屋上に設置された大型ビジョンで、映画の告知映像が大音響と共に流れていた。福岡市中央区の国体道路。近くに事務所を構える自営業の男性(56)は「窓を閉めていてもうるさくて仕事の話ができない。でも『音』を規制する法律がないらしいんです」と困惑する。SOSを受けた特命取材班が調べると、「縦割り行政」による弊害が見えてきた。

 ビジョンは縦4メートル、横7・6メートル。2017年に設置され、交差点を行き交う人々に向けて、音声付きの広告映像を発信してきた。絶え間ない音に困った男性は、数回にわたって設置業者に「音量を下げて」と要請した。しばらくすると大音量に戻ってしまう。市に相談しても動いてもらえなかったという。

 取材班がまず注目したのは、国土交通省が所管する屋外広告物法。大型ビジョンは屋外広告物に当たり、自治体が設置を許可する。問題のビジョンも福岡市が許可していた。ところが市都市景観室は「ビジョンが出す『音』は法律上、屋外広告物に当たらず、規制できません」と関知しない姿勢を示した。冒頭の男性もここで諦めていた。

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 それなら環境省が所管する騒音規制法はどうだろう。同法が規制するのは主に工場や建設作業、自動車による騒音。ただし深夜営業店舗などの騒音を防ぐため、多くの自治体が条例を定めている。市環境保全課に尋ねると「福岡県警が所管する、県騒音防止条例の対象かもしれません」。方々の行政機関に取材し、ようやく同条例で規制されていることが分かった。

 同条例は「商業宣伝を目的とした拡声放送」について、午後8時~翌日午前9時に放送しない▽毎時15分以上の休止時間をおく▽地上7メートル以上から放送しない-などと定めている。地域や時間帯によって音量を50~75デシベルとする基準もあり、違反すると最も重い措置で5万円以下の罰金を科せられる。

 問題のビジョンは地上13メートルに設置されており、午後8時以降の放映もあった。管理業者に条例を認識していたか問い合わせると、同社は「『音』も含めて市の許可を受けたつもりだった」と驚いた様子だった。

 もっとも、同条例に基づいて業者が摘発された例は過去にない。県警生活経済課は「相当悪質でない限り、基本的には当事者間の話し合いで解決されるのが望ましい」と静観する。

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 同様の条例は多くの自治体で制定されている。事実上違反状態のビジョンでも許可されているのは、福岡だけではない。東京都も「屋外広告物」と「騒音」の担当は別で、「許可申請者に音についての注意喚起はしない」と明言する。

 大型ビジョン事業者でつくる一般社団法人・日本パブリックビューイング協会(東京)は「知らずに違反してしまったケースは他にもある」と明かす。

 一方、規制内容の古さを指摘する声もある。福岡県で同条例が制定されたのは1955年。ビジョンの音は想定されていなかった。新川達郎・同志社大大学院教授(行政学)は「広告媒体のあり方がどんどん変わり、既存のルールで対応できていない面もあるだろう。問題が出てきた以上、行政は縦割りでなく、連携して啓発や規制に取り組む必要がある」と語った。

 問題のビジョンは7月、管理業者が代わった。市は新たに設置許可を出したが、条例については知らせていない。

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