高取小の桜 残った 校舎拡張で伐採予定、住民が「存続」署名

西日本新聞 ふくおか都市圏版

中村弘さんが植えた木とみられる、移植対象の桜の木 拡大

中村弘さんが植えた木とみられる、移植対象の桜の木

桜の挿し木に関する説明を聞く高取小の関係者。右から3人目が中村弘さん、左端が亀井味楽さん

 校舎の拡張に伴い伐採予定だった高取小(福岡市早良区)の桜の木が、移植と挿し木という形で残されることになった。開校間もない時期に植えられ、70年近く児童を見守ってきた桜。地域住民や卒業生による署名運動が実り、市教育委員会が計画を見直した。関係者は「地元の象徴が残った」と喜んでいる。

 高取小の校区は、関東や関西からの転勤者に人気が高い文教地区。古くからの商店街がある一方、都市化も進んでいる。児童数は増え現在、約1250人。プレハブ教室を利用するほど手狭で、2022年度には約1300人に増えると市教委は試算する。

 市教委は校舎の拡張を計画し、敷地内の桜の木を伐採する計画を立てた。今春ごろ地元に伝えられると、小学校の卒業生を中心に惜しむ声が広がった。

 本紙がこの動きを5月24日付朝刊で報じたところ、記事を読んだ男性が公民館に「残してほしい」と訴えてきたという。こうした後押しを受け、地元の自治協議会などが6月、木を残すか移植を求める署名用紙を作成。公民館に置くと、10日ほどで500人近い人が次々と記入していった。

 住民や卒業生の代表は署名を携え、星子明夫教育長に面会し「伐採は誠に残念で耐え難い」と訴えた。星子氏は「桜は日本人の心ですからね」と応じ、計画の見直しの検討を始めた。

 その後、市教委は高取小に樹木医を派遣し桜の状態を診断。敷地内の13本のうち、移植に耐えられそうな2本を選び、校門近くからグラウンドに移植することにした。

   ◇    ◇

 8月19日、卒業生ら約10人が高取小に集まり、移植の準備作業を見守った。高取小同窓会長で高取焼味楽窯の十五代亀井味楽さん(58)は、切られたばかりの桜の枝を段ボール箱に詰めた。10月に開く5年に1度の同窓会に向け、灰にして記念品の湯飲みの釉薬(ゆうやく)に混ぜるという。

 桜の中には内部が空洞化したり、腐食したりした木もあったが、挿し木により80本分の苗木も作ることで、次世代に命をつなぐ計画も同時に進める。

 同窓会顧問で近くに住む中村弘さん(87)は、新任教員として開校したばかりの高取小に着任。当時の校長に促され、校門の脇に植えられていた桜に苗木を追加した。

 記憶はややおぼろげだが、植えた場所から考えると、今回移植される2本に含まれているとみられる。校舎の拡張は時代の流れとはいえ、「慣れ親しんだ桜が無くなるのは非常に寂しかった」と吐露する。

 真夏の熱気がこもる風に、移植を待つ桜の枝が揺れた。その様子を見上げながら中村さんは言葉を続けた。「私たちが地元を思い、愛してきた象徴として桜を残し、子どもたちに語り継いでいってほしい」。桜は来春もまた、卒業生も新入生も見守ってくれるに違いない。

福岡県の天気予報

PR

PR

注目のテーマ