江戸城での刃傷といえば「忠臣蔵」の松の廊下での一件が有名…

西日本新聞 オピニオン面

 江戸城での刃傷といえば「忠臣蔵」の松の廊下での一件が有名。だが殺傷事件は他にも起きている。1823年4月の夕刻、松平外記(げき)という旗本が城内で刀を抜いた

▼彼は突然同僚らに切りつけ3人を殺害、2人を負傷させるとその場で自害した。助かった者も逃げ回ったり、便所に立てこもったりして「武士にあるまじき臆病」と厳罰を受ける

▼原因究明が進むとさらに衝撃が広がった。上役や同僚からの数々のいじめが判明したのである。羽織の紋を墨で塗りつぶす。刀のさやに火箸で穴を開ける。弁当を盗み馬糞(ばふん)に詰め替える…

▼旗本は当時のエリート層。しかも分別ある(とされる)大人にしてこの稚拙さだ。集団でもてあそぶ人間の性根は悲しいほど現代と似通っている

▼今週から新学期が始まる学校もある。この時期は子どもの自殺が年間で最も多くなる。「死にたくなるほどの学校なら行かなくていい」。今はそんな呼び掛けが広がる。校外で受け入れる避難場所も増えている。併せて親御さんには苦しむ子への理解と、言動への細心の目配りが求められる

▼江戸時代には「鯱(しゃち)病」なる病気もあった。登城口の門にある鯱の飾りを見て「今日もいじめられるのか」と登城拒否になる者がいたという。大丈夫。人間関係を思い悩む人は昔からいた。嫌な目に遭うのを避けるのは決して異常なことではない。だから大丈夫。どうか1人で思い詰めないで。

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