変わるハンドル 安全運転考(2)自動化 希望の光ではあるけれど

西日本新聞 社会面

 2018年3月、米国アリゾナ州。自転車を押して歩く女性が時速62キロで走る車にはねられ亡くなった。自動運転の車が初めて歩行者を死なせた事故。センサーは衝突の6秒前に女性を認識したが、自動ブレーキが作動しなかった。

 誰もが自由に移動を-。自動運転車は未来の車として、各国で開発競争が繰り広げられる。「先進国の死亡事故に衝撃が走った」(業界関係者)

 国内での開発をリードしていた群馬大も17年9月に自動運転車の事故を起こす。時速十数キロで公道を走行中、緩やかな左カーブでハンドルを切りすぎてガードレールに衝突した。原因はプログラミングミス。「終わった」。後部座席にいた小木津武樹准教授(カー・ロボティクス)は頭が真っ白になった。

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 自動運転車は車載カメラとセンサーで道路状況を把握、人工知能(AI)が地図と照合しながら走る。センサーは雨や雪に弱く、道路工事一つで地図の修正が必要などの課題がある。

 日本は米国より道幅が狭く、入り組んでいる。1センチ単位の高精度な立体地図が不可欠だ。

 地図大手のゼンリン(北九州市)が出資する「ダイナミックマップ基盤」(東京)は今春、全国の自動車専用道路と高速道路の3万キロに及ぶ高精度地図を作成した。ただ、120万キロある一般道は「横断歩道や交差点があり複雑さが桁違い。作成するかも未定」(担当者)。

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 自動運転車の開発が難航する裏側で、タクシーやバスの運転手不足は深刻だ。

 政府は高齢者の移動手段確保のため、一般車両が有償で客を運ぶ「ライドシェア(相乗り)」や定額タクシーの導入を検討する。

 国家戦略特区に選ばれた兵庫県養父市は18年5月、ライドシェアを始めた。利用は多くても1日3件。タクシー会社への配慮で利用地区が限られ、運営するNPO法人は「経費も賄えない」と話す。

 JTBと群馬県明和町社会福祉協議会が今月1日に始めた定額タクシーの利用者は、まだ1人。月7日の利用で9600~3万400円。無料体験した女性(84)は「年金受給者には手が出ない」。来年度の事業化を目指す同協議会は「(JTBや運営主体が)利益が出ないと…」と語る。

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 04年に開発を始めた小木津は全国の一般道で走らせる目標を変更した。「駅-病院-商店」など固定ルートを走る「地域内交通」を新たなゴールに据える。

 小木津と連携する大分市は昨年10月、JR大分駅と約1・2キロ離れた観光施設を結ぶ自動運転車を走らせた。「運転手不足への危機感と高齢者事故を減らすことが狙い」と担当者。自動運転車を活用したまちづくりを模索する。

 「街」のような日本一広い九州大伊都キャンパス(272ヘクタール)では、AIバスが走る。スマートフォンのアプリで行き先と乗り場を選ぶと数分で配車され、学生は「歩くと15分以上かかる。助かる」。ゆくゆくは自動運転を目指している。

 人口減少が進む中、自動運転車は「希望の光」。まだ小さな光、だけど。=敬称略

 自動運転のレベル レベル1は速度かハンドル操作のどちらかを、レベル2は両方の操作を自動制御する。レベル3は事故など緊急時だけ人が対応。レベル4はほぼ全ての操作が自動になる。レベル5は人の対応は不要。現在、レベル2まで実用化している。政府は2020年をめどにレベル3、25年ごろにレベル4の実用化を目指す。

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