バリアフリーの先へ 岩田 直仁

西日本新聞 オピニオン面

 先日、福岡・天神で横断歩道を渡る車いすの男性を見かけた。7車線もあるから渡り切れるのか気をもんでいたら、若い女性が小走りに駆け寄って一声掛け、車いすの後ろに回った。渡り終えると軽く会釈して、さっと立ち去った女性のカッコよかったこと。

 何かに困っているような障害者を街角で見かけても、声を掛けた方がいいのか、おせっかいでは、などと迷ってしまう。いつも一歩を踏み出せずモヤモヤを抱えてきた。

 そんなことを、ある脳性まひの男性に話したら、「あなたが、障害者との間に壁をつくっているからです」とばっさり。心のバリアー(壁)ってこと? 考え込むと、「これまでの人生で、障害者の友だちも知り合いも1人もいないでしょ」。

 そう看破したのは横田弘さん。神奈川を拠点に、過激なまでに旺盛な活動で障害者の権利保障を拡充してきた、脳性まひ当事者団体「全国青い芝の会」の会長を務めた。お会いしたのは1997年ごろ。亡くなって6年になる。

 70~90年代に、車いすでの路線バス乗車を要求し、施設への障害者「隔離」に反対。胎児の障害を理由に中絶を認めようとした旧優生保護法改正を阻止した。車いすで駆け回り、障害者が普通に暮らせる社会を目指した横田さんが存命なら、今、国会から広がりつつある変革の波に目を細めるのではないか。

 参院選で車いすの議員が2人誕生した。重度身体障害のある木村英子氏と筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の舩後(ふなご)靖彦氏で、ともに、れいわ新選組。国会のバリアフリー化が進み、本会議場への介助者入場も認められた。

 障害者総合支援法に基づく「重度訪問介護」は、最大1割の自己負担で利用できるが、通勤や就労に関わる介護は対象外。木村さんが制度の見直しを求める質問主意書を参院に提出した。重度の障害がある人が働くための課題が、あぶり出されていく。

 横田さんの指摘に話を戻せば、幼稚園から大学まで私の身近に障害者がいた記憶はない。社会人になって30年余、取材で向き合うことはあっても一緒に働いたことはない。

 そのことは、私の人生を少なからず貧しくしたと思う。物理的な壁、制度の壁に続いて、心の壁を壊すには何が必要か。「福岡青い芝の会」会長の中山善人さんに尋ねると、答えは一言、「インクルーシブ(包括)」だった。

 障害の有無を問わず、可能な限り地域で一緒に暮らして交わって、バリアフリーのその先へ。道のりは長くとも。

 (論説委員)

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