日米貿易交渉 大枠合意の中身が大事だ

西日本新聞 オピニオン面

 安倍晋三首相とトランプ米大統領が日米の貿易協定について大枠で合意した。9月の国連総会に合わせて首脳会談を行い、署名を目指す。日本が米国の農産品に対する関税を大幅に引き下げる一方、日本が求めた米国の自動車関税撤廃は先送りすることで一致したもようだ。

 トランプ氏は米国産農産品をもっと日本に売り込もうと圧力を強めていた。米中貿易交渉のような険悪な事態に至らなかったのは、ある意味で幸いだが、合意内容の詳細は不明で、9月末に公表するという。首相は「両国の経済にとって大きなプラス」と自画自賛したが、中身が分からなければ評価のしようがない。政府は交渉成果をできるだけ早く明らかにすべきだ。

 今回の交渉は、トランプ氏の大統領就任後に環太平洋連携協定(TPP)から離脱した米国側の要求で始まった。茂木敏充経済再生担当相と、米国のライトハイザー通商代表が話し合いを重ねてきた。

 トランプ氏は5月に国賓として来日した際、「8月に大きな発表ができるだろう」と述べていた。政界では、7月の参院選への影響を避けるため、決着を選挙後に先送りする意図と受け止められた。大枠合意のタイミングはこの見立て通りだった。

 トランプ氏再選に向け早く結果が欲しい米国に、日本は押し切られ譲歩したのではないか。一部で懸念の声が上がるのは、そうした経緯があるためだ。

 農産物の関税引き下げを巡っては、日本はTPPの水準を限度とする方針で交渉に臨んだ。トランプ氏は「米国はTPPに全く縛られない」と言い放ち、自動車輸入への追加関税や数量規制などをちらつかせ、交渉を優位に進めようとしていた。

 今回の合意について茂木氏は日米双方の利益になるウィンウィンの関係だと強調する。日本は一部工業製品の関税撤廃を勝ち取り、自動車への追加関税や数量規制は見送られるというが、米国が具体的に確約したのかなど、まだはっきりしない。

 もともと米国は、TPP交渉で自動車関税の撤廃を受け入れていた。日本が農業分野でTPP水準まで譲歩するのなら、米国に自動車関税撤廃を求めるのが本来の筋道だ。交渉は幅広い分野に及ぶ。一部のみでの論評は避けるべきだが、日米貿易は国民生活や企業活動に深く関わる。納得のいく説明が必要だ。

 安倍首相は貿易協定と併せて米国産トウモロコシの購入方針も発表した。農業団体を支持母体に持つトランプ氏の顔を立てるためとみられる。互いの選挙でウィンウィンの関係を築くために通商問題を利用するような政治は、もう終わりにしたい。

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