独自の感性、漁村で育む 京アニ全犠牲者 佐伯市出身の森崎志保さん(27)

西日本新聞 社会面

 京都アニメーション放火殺人事件で犠牲になった森崎志保さん(27)は、映画「聲の形」で動画を担当し、映画「響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」では原画を担った。「今後の抱負」には「『一筆入魂』していきます」と記していた。生まれ育ったのは大分県佐伯市の小さな漁村。海岸で夢中になって絵を描いていた少女は、努力して念願のアニメの仕事に就き、人々を笑顔にする作品の制作に携わっていた。

 森崎さんは3人姉妹の長女。幼い妹の手を引いて歩く面倒見の良い姉だった。絵が大好きで、高校の体育祭では校内に飾る看板をデザインした。

 中学で美術を指導した前門清一郎さん(64)は「おとなしかったが、本当に絵に熱心だった」と振り返る。中学2年のとき、県内の美術展で入賞。漁港を題材にした水彩画だった。青空や雲が水面に映り、静かに浮かぶ漁船で男性が1人、作業する様子を描いた。

 授業で港に来た時には男性が乗る漁船の姿はなく、後から想像で描き加えたものだったという。真意を尋ねると「これで良いんです。いつも見ている景色なので」。前門さんは「見たままではなく、暮らしを描きたかったようだ。独自の視点や感性を持っていた」と話す。絵は教職員向けの会報に掲載され、森崎さんは「自分がきれいだと思った風景を、ありのままに伝えたくて、ありのままの色を塗ってみるようにしてみました」と説明文を記した。

 高校2年時には地域創生などの発想を競う大分大のコンテストでグランプリを受賞した。シャッター通りになった商店街の魅力向上のため、アートなどを飾るアイデアを発表し、高く評価された。高校3年になると短編アニメを自主制作し、文化会館で披露した。「作品へのこだわりが強く、クオリティーは高かった」(男性教諭)。高校卒業後は愛着のある古里を離れて、大阪のアニメ専門学校に進学。その後、京都アニメーションに就職した。

 同級生の娘を持つ実家近くの女性は「夢に見ていた仕事に就き、頑張っていたのに…」。前門さんは「まさか森崎さんが巻き込まれていたとは。残念でなりません」と目に涙を浮かべた。

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