長崎新幹線 九州7県で新たな戦略を

西日本新聞 オピニオン面

 昭和のような高度経済成長は今後見込めない。平成で経験したような大災害は繰り返される恐れがある。

 令和の時代を迎え、新幹線をはじめとする高速交通網を、これからの社会にどう位置付けるのか-。そんな大局的な視点こそ、この議論には求められる。

 与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(PT)がきのう、九州新幹線西九州(長崎)ルート新鳥栖-武雄温泉の整備方式について、「フル規格」とする方針を了承した。

 フル規格は通常の新幹線と同じ方式だ。在来線を利用したミニ新幹線方式の採用を退けた。全国規模のビジネス展開や観光回遊により寄与することや、在来線に比べて災害に強いとされる点などを総合的に勘案した。

 PTは与党の事実上の最高意思決定機関とされる。決定により、袋小路に入った感が強かった問題は大きな節目を迎えた。

 とはいえ佐賀県は、地元にはメリットが少なく、多額の財政負担も伴うとしてフル規格整備に反対している。

 建設費はJR各社が30年間支払う線路使用料を充てた上で、残りを国と沿線自治体が2対1の割合で負担する仕組みだからだ。フル規格を熱望する長崎県との対立は決定的である。

 こうした中、財源について、自民党の稲田朋美・整備新幹線等鉄道調査会長が今月、本紙の取材に対し、興味深い「対案」に言及した。佐賀県の立場に理解を示し、「今の負担の仕組みを絶対視しない議論が必要」と指摘した。具体的な財源としてまず触れたのは、JRの線路使用料の期間延長である。現行の2倍となる「60年間」も議論の対象になり得るとの見解だ。

 もう一つが、東日本大震災を受けて策定された国の国土強靱(きょうじん)化計画の関連予算だ。日本列島に災害に強い交通インフラを通すという観点からの提起だ。

 「世界最高の技術水準」と称される新幹線は、早期地震検知システムによる列車の緊急停止など安全対策の実践例が数多く報告されている。

 稲田氏の言う財源案では、既存の路線が走る地域との間に不公平感も生じよう。それでも議論の端緒には十分なり得る。

 私たちは、この問題を長崎、佐賀両県の損得勘定論に矮小(わいしょう)化してはならないと訴えてきた。九州地方知事会は両県に配慮し、3年連続で長崎ルートの整備促進決議を見送っている。「国民経済の発展に資する」という新幹線整備の原点に立ち返り、どうすれば佐賀県民も歓迎する計画になるのか、議論の先頭に立つべきだ。

 九州7県一丸となって戦略的なアイデアを出し合いたい。

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