韓国 対日圧力誤算続き 輸出優遇除外WTO提訴準備

西日本新聞 総合面

 【ソウル池田郷】日本政府が28日、安全保障上の輸出管理で優遇措置を取る「ホワイト国(優遇対象国)」から韓国を除外したことを受け、李洛淵(イ・ナギョン)首相は同日、「世界貿易機関(WTO)への提訴を滞りなく進める」と表明した。菅義偉官房長官は記者会見で「わが国の輸出管理を適切に実施する上で、必要な運用の見直しだ」と改めて措置の正当性を主張した。

 韓国外務省は同日、長嶺安政駐韓大使を呼んで抗議した。韓国政府と与党「共に民主党」は対策会議を開き、素材・部品の国産化を進めるため来年から3年間で5兆ウォン(約4300億円)超を予算化することを決めた。日本からの輸入に頼る産業構造の転換を図る狙い。

 日本の輸出規制強化措置に反発する韓国は23日、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)を破棄すると通告。一方で李氏は、協定が終了する11月下旬までに日本が一連の措置を撤回すれば、破棄決定を見直す可能性に言及している。

 韓国がWTOに提訴して最終的な判断が出るまでに少なくとも1年以上かかる可能性が高い。韓国国内でも対抗措置としての効果に懐疑的な見方がある。

■側近疑惑 政権に逆風

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は28日、日本政府が「ホワイト国(優遇対象国)」から韓国を除外したことに強く反発した。だが軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を通告するなど強硬姿勢で日本に翻意を迫る戦略は不発に終わり、安全保障上の悪影響を懸念する米国から強い批判を受けるなど誤算とも言える事態が続く。文大統領側近のスキャンダルも拡大し、政権への風当たりが強まっている。

 協定破棄を23日に日本に通告し、意気軒高だった文政権。だが24日には北朝鮮が日韓関係悪化の間隙(かんげき)を突くように短距離弾道ミサイルを発射。日韓が領有権を主張する島根県・竹島で韓国軍が25、26日に防衛訓練を実施すると、米国務省は「非生産的」と批判する異例の声明を出した。協定破棄後も良好な米韓関係をアピールしていた文政権のメンツはつぶされた格好だ。

 韓国メディアは、不満を高めるトランプ米政権が米韓合同軍事演習を縮小したり、在韓米軍の駐留経費について大幅な負担増を迫ってきたりすることを警戒。保守系紙の中央日報は28日付で「韓国政府は果たして破棄後の波紋を予想し、対策を立てて決定を下したのか疑わしい」と指摘した。

 さらに文氏が法相候補に指名した最側近のチョ国(グク)前民情首席秘書官について、娘の不正入学や家族による不透明な投資など次々と疑惑が浮上し、国民の不信は政権に飛び火している。

 韓国・亜洲大の朴盛彬(パク・ソンビン)教授(国際政治経済学)は「兵役逃れや資産の不正取得など権力者の家族に疑惑が浮上すると、韓国世論はたちまち怒りに火が付く。不正入学は受験競争が激しい社会だけに特別だ。世論の空気が変わってきた印象もある」と話す。朴槿恵(パク・クネ)前大統領も、友人の娘の不正入学事件で弾劾に追い込まれた。

 金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長は28日、記者会見で日本の措置に「強い遺憾」を表明した上で、文氏が15日の演説で述べた言葉を引用し「日本はわれわれが差し伸べた手を握ることを期待する」と譲歩を求め、政権の置かれた苦しい状況をうかがわせた。 (ソウル池田郷)

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