イチョウ並木なぜ伐採? バリアフリー化工事契機に住民賛否

 「なぜ伐採するのか」。福岡市城南区七隈周辺の市道「福大通り」沿いに立ち並ぶイチョウについて、特命取材班に複数の市民から意見が届いた。作業が進む中、伐採計画を知らなかった住民が「立派に育った街路樹なのに忍びない」と再考を求める声を訴えてきたのだ。一方で、落葉などの処理の大変さから、やむなしの住民もいる。取材を進めると、伐採についての合意形成や周知不足といった課題が見えてきた。

 福岡市が計画した、車道と歩道の間にあった段差を解消するバリアフリー化の工事に伴い、歩道側に植えてあったイチョウを撤去することになった。市は2015年度、工事の概要や街路樹撤去について、町内会長ら自治協議会、その後に道路脇の住民を対象にした説明会を実施した。

 道路脇の住民向け説明会に出席した人によると、出席者の大半から上がったのは「一気に落葉するから、雨が降ると滑って危険」「ぎんなんが臭くて靴の裏に付いたら大変」といった意見だったという。紅葉時期の美しさは分かるが、そばの住民や店舗にとっては、毎年の掃除などが負担になっていたのだ。

 福大通りのイチョウは基本的に伐採し、一気に葉が落ちる性質はない常緑樹のクロガネモチに植え替えることが決まった。

 道路工事は16年度、干隈三差路から東に向かってスタート。20年度に七隈四ツ角の交差点まで完了する予定で、将来的には城南市民センター前まで実施する計画という。それに伴い、道路の両側にある107本のイチョウが伐採される方向。移植先を探した結果、11本を同市西区の今津運動公園に移したが、それ以外は伐採する予定だ。

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 国土交通省国土技術政策総合研究所によると、17年3月末時点で全国の街路樹(高さ3メートル以上)は約670万本。このうち約8%をイチョウが占め、樹種別でトップだった。

 なぜ、イチョウは“人気”なのか。「丈夫で手間がかからない。病害虫が少なく、せん定後も芽を出す力がある」。担当者はこうした利点を並べる。

 関東大震災で大火が起きた後も無事で、耐火性に優れているとして植樹が増えた経緯もあるという。

 福岡市内でも、19年3月末時点で約5万5千本の街路樹(同)のうち、イチョウは約6600本あり、12%を占めている。

 城南区役所によると、一帯の道路は約30年前に整備され、その際にイチョウを植えたようだという。

 ただ、市みどり運営課が「街路樹はまちとともに育っていく」と語るように、地域の景観構成や特色づくりにも大きく影響している。通勤通学や散歩、買い物…。何十年という時間の中で、心の風景になっている住民も多い。

 福大通りのイチョウの伐採は、通りがかりに目撃して初めて知り、驚く住民も少なくない。住民説明会は町内会長らと通り沿いの住民向けだったので、本紙に意見を寄せた読者は「説明を受けていない」と憤った。

 工事に伴う街路樹の伐採について、全国的にはアンケートや立て看板、広報誌で広く合意形成を図る自治体もある。街になじみ、多くの住民に親しまれてきた七隈のイチョウ並木。取材班に届いた声には、景観をいとおしむ思いが込められている。街路樹の伐採については幅広い合意形成が必要との教訓ではなかろうか。

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