冠水「いつ帰れるのか」 続く雨 疲労と不安 佐賀・大町の病院、油除去に忙殺

西日本新聞 社会面

 記録的な大雨から一夜明けた29日、佐賀県武雄市で浸水した住宅から新たに女性1人の遺体が見つかり、家族は悲しみに暮れた。冠水した同県大町町の順天堂病院では孤立状態が続く。「いつ帰れるのか」。30日も局地的に激しい雨が降るとみられ、避難住民からは不安の声が漏れる。

 親族によると、遺体で見つかったのは武雄市北方町に住む下津浦サチノさん(96)。孫の男性(41)は「足が悪かったので、急に水が入ってきて動けなかったのだろう。高齢でも気持ちは元気だった。無念です」と肩を落とした。近くに住む男性の父親や叔母が日ごろから面倒を見ていたが、災害時のことも考え、施設への入所を考えていた直後だったという。

 「避難せんといけんよ」。近くの中川文子さん(78)が、下津浦さんに電話したのは28日午前8時ごろ。「2階に上がるから大丈夫」と答えたという。中川さんは同10時半ごろ、消防団のボートで避難し、団員に「残っている人がいるから助けて」と伝えたが「私の考えが甘かった。一緒に避難すれば良かった」と悔やむ。

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 順天堂病院がある一帯は冠水し、湖のような状態が続く。県によると、29日も隣接する老人保健施設を合わせて患者や職員ら200人以上が取り残される。7割の患者は寝たきり状態のため、移送はしない方針。早朝から自衛隊などがゴムボートで職員や食料などを輸送し、食料や水は確保されつつあるという。

 「患者さんに安心して過ごしてもらうことを一番に考えた」。雨が降り始めた27日に宿直勤務だった非常勤医師の曽和信正さん(67)は、2日ぶりにボートで帰路に就いた。あえて患者には状況を詳しく説明しなかったため、院内は落ち着いた様子だったという。

 職員たちは終日、院内から水をかき出す作業に追われた。1階には鉄工所から流出した油が広がり、事務職の20代女性は「どろどろで、臭いもひどかった」。作業療法士の大坪哲也さん(34)も「使えなくなった器具もある。被害はどれほどになるのか…」と途方に暮れた。

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 大町町内の公民館には住民約190人が避難。病院近くに住む会社員の灰塚新一さん(41)は両親と妻、生後8カ月の長女と身を寄せる。娘のおむつを取りに行くため、ボートで自宅にいったん戻ったが、家の中は油まみれだった。「水が引かないことには戻れない。いつになるのか」

 町北部の土砂崩れ現場近くに住む介護職の40代女性も「状況が分からない」と不安げな表情。近くの山に新たな亀裂が見つかり、地域の区長からは帰宅を控えるよう言われたといい「雨が降ったら再び土砂崩れが起きるのでは。先が見えません」と声を落とした。

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