変わるハンドル 安全運転考(4)子ども 見守る目線 優しい道に

西日本新聞 社会面

 歩道に幼児の手のひらほどのお地蔵さんと一輪のひまわりが供えられていた。

 滋賀県。交差点で5月、右折車と衝突した直進車が歩道にいた園児らの列に突っ込み、16人が死傷した大津市の事故現場。歩道への車の進入を防ぐため、新たに防護柵が整備された。

 政府は6月、地元の要請を受け、保育園や幼稚園周辺への車両進入を規制する「キッズゾーン」の導入を決定。翌7月、市は現場から約2キロ離れた保育園近くを全国で初めて指定した。道路の一部(縦3・5メートル、横2・5メートル)を緑色に塗装し、平日午前7時半~9時は車両通行禁止にした。

 「事故が起きてからでは遅いのに」。娘(3)が事故で重傷を負った女性(36)は納得がいかない。

 京都府亀岡市で2012年、集団登校中の児童らが車にはねられ、10人が死傷した。市は14年、車両の速度を抑えようと、2キロにわたり鉄製ポールを立てて道幅を狭めた。

 長女と登校中に犠牲になった女性=当時(26)=の父中江美則(56)=コラージュ右上=は憤る。「最後尾にいた娘が子どもたちの盾になった。あの時、ポールが1本でもあれば」。女性は新しい命を宿していた。

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 2学期が始まった今月27日朝、福岡市中央区の平尾小近く。傘を差して登校する児童の脇を乗用車がゆっくりと走っていった。市が3月に緩やかな段差を付ける構造物「ハンプ」を設置し、スピードは出せない。

 数年前、近くの交差点で車2台が衝突、学校の塀を壊す事故があった。けが人はいなかったが、対策を求める声が上がった。「幹線道路の抜け道で飛ばす車が多かった。大惨事が起きる前に整備されて良かった」。平尾校区自治連合会長の小山毅(67)はこう話す。

 事故の未然防止にビッグデータを活用する取り組みも始まっている。

 国土交通省は車両の挙動データなどを送受信できる自動料金収受システム「ETC2・0」を活用。急ハンドルや急減速が多発し、事故が予測される場所のデータを収集している。

 このデータを基に昨年3月、福岡県新宮町の通学路にハンプを設けた。国交省と町は来年度までに計3カ所に増やす方針だ。

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 登校時間帯は車両の進入を遮断する自治体もある。

 新潟市は17年4月、小学校1校の通学路に自動で昇降するゴム製ポールを新設した。普段は地中に収まり地上に姿を現すのは平日午前7時半~8時15分だけ。この道を通っていた約100台の車は迂回(うかい)するようになった。

 交通政策に詳しい弁護士の高山俊吉(78)は「事故を防ぐには物理的な対策が重要」と指摘する。

 「わっ-、わっ-」

 大津市の女性は事故後、夜中に娘が突然目を覚まし泣き叫ぶ姿が忘れられない。骨盤骨折で2カ月以上入院した。ソファで跳びはねるまでに回復したが、「ママ、どこ?」とそばにいないと不安がるようになった。

 女性は思う。「ハード面の対策は必要。でも、今回の事故は特別でなく、これからも起こりうる。子どもたちを守るため、運転する人の意識を変えないといけない」 =敬称略

 子どもの交通事故 全国で2014~18年、歩行中に交通事故で亡くなるか重傷を負った小学生は3276人。1年生が最も多い872人(26.6%)で、2年生799人(24.4%)、3年生630人(19.2%)だった。時間帯は、下校時間にあたる午後3~6時が1878人で6割近くを占めた。

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