「洗濯つらい」保育園の布おむつ使用に悲鳴 保護者「帰省するような大荷物」で登園も

西日本新聞 ふくおか都市圏版

 福岡市で子育て中のパート社員メグさん(38)=仮名=から、悲鳴に近い相談が寄せられた。「保育園で布おむつを使うため、毎晩洗濯に追われています。洗濯物よりもっと息子と向き合いたい」。今春の入園前に見学した6カ所のうち5カ所が、布おむつだったという。家庭では9割以上が紙おむつだが、保育の現場は「布派」が根強いのだろうか。あなたの特命取材班が調べた。

 メグさんは毎朝「帰省するような大荷物」を抱えて登園する。着替え4回分とおむつカバー、タオルなど。おむつは園と契約するリース業者が洗濯までしてくれる。それでも「紙おむつなら服やシーツもここまで汚れないのに」と嘆く。紙を希望する親は他にも多いが、入園前から分かっていただけに声を上げにくい。

 会社員マコトさん(31)=同=が利用する保育園では、使用後の布おむつは自宅に持ち帰る。ふた付きバケツで保管されていて、臭いがひどく、カビが生えることも。だがもっと気になるのは、保育士がおむつ交換に追われていることだ。「子どもにゆったり接してもらいたいけど、余裕がないみたい」。メグさんも「保育士不足なのに、効率化することがタブー視されている」と指摘する。

保育園「子どもと密に触れ合うため」

 布派の保育施設はどれほどあるのだろうか。布おむつリース会社のベビーフレンド(福岡県糸島市)は「契約先は県内50カ所を超える」と話すが、リースしていない保育所もある。

 福岡市内には416の保育施設がある。市は「布か紙かは各施設の判断であり、把握していない」とする。ただし市立保育所は7カ所すべてが布。北九州市は、布が主流だった時代からリース補助制度があり「今もほとんどの認可保育所が使っている」。両市は「紙を要望する声は特に聞かない」と口をそろえた。

 福岡市西区の「めぐみ保育園」は開園から42年間、布を使ってきた。園長の本田陽子さん(73)は「排せつしたことを確認しやすく、子どもと密に触れ合える」と理由を語る。紙は数回分の尿を吸収するが、布は毎回交換しなければならないからだ。他の保育所も「再利用できる」「排せつ物を見て親も健康状態をチェックできる」「おむつ離れが紙より早いようだ」などのメリットを挙げた。

 めぐみ保育園は紙の導入も検討したが、親が名前を書いて持参し、使用後のごみを持って帰る負担が生じる。保育士も、おむつやごみを取り違えないよう気を使う。園がごみを処理する場合は保管場所や処理費用が必要となることもあり、実現しなかった。

 写真:保育園帰りの親子。大きな荷物を抱え、子どもを抱っこすることも。

公費で園内処分する自治体も

 しかし、紙に切り換えて久しい自治体もある。

 札幌市や神奈川県川崎市は、すべての市立保育所が十年以上前から紙を使用している。ごみは「各自持ち帰るのは不衛生で負担も大きい」と、保育所が公費で処分している。名古屋市も来年度からの公費処分を目指し、検討を進めている。ある担当者は「自ら希望する人は別として、布おむつは大変でつらいと思う。紙を使うことで気持ちや時間の余裕ができれば、その分、子どもに手を掛けられるのに」と話した。

 企業も親の負担軽減に乗り出している。紙おむつ最大手のユニ・チャーム(東京)は7月、保育所向けの定額サービスを始めた。ゼロ歳児なら1人につき月額3240円(週5日)で何枚でも使うことができる。親や保育士の負担が軽減されると好評で、既に100施設以上が導入した。

 紙おむつは1985年頃から急速に普及した。吸水性が高まり、蒸れやかぶれは大幅に改善。薄型化も進んで、ごみとなる容量は減った。排せつのサインが出たり、成長に合わせて形を選べたり、使い勝手も良くなった。

 実際のところ、子どもにとっては布と紙のどちらがよいのだろうか。

 佐賀大の甲斐今日子教授(被服衛生学)は「特に肌触りは、布の方がよいのは間違いない」と話す。ぬれると不快になり、交換してもらうと気持ちよくなる。こうして親とのコミュニケーションを繰り返し、子どもの五感が育まれていく。ただし排せつ後すぐに交換しないと、かぶれるなど「使い方によってデメリットもある」と指摘する。

 「布と紙それぞれのメリットがある。洗濯に追われて子どもと向き合えないくらいなら、布にこだわる必要はない。家庭の状況にも配慮して選ぶのがよいのではないでしょうか」と甲斐教授。まずは、親と保育所が本音で語り合うことから始める必要がありそうだ。

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