さえぬ景気、試練の増税 伸び悩む個人消費 米中貿易摩擦拡大

西日本新聞 総合面

 10月1日の消費税増税は、景気の先行きに暗雲が垂れ込める中での実施となる。前回2014年の税率引き上げでは個人消費が大きく落ち込んだ。政府はこれを教訓に大規模な景気対策を用意するものの、個人消費はただでさえ力強さを欠き、世界経済も米中貿易摩擦で減速懸念が強い。「内憂外患」の日本経済にとって試練の増税となる。

 「国内の消費を十二分に下支えしたい」。安倍晋三首相は8月26日、訪問先のフランスでの記者会見で、消費税増税後の経済運営に万全を期す構えを強調した。

 政府が警戒するのは、増税前の「駆け込み需要」の反動で景気が一気に悪化する事態だ。14年4月の税率5%から8%への引き上げでは、直前1~3月期の個人消費が前期比2・0%増と伸び、直後の4~6月期に4・8%減と急落した。景気が腰折れしかけた記憶は首相の脳裏に刻まれ、その後の2度の増税延期にもつながった。

 今回は「同じ轍(てつ)を踏むわけにはいかない」(経済官庁幹部)と、政府は考えられる対策を総動員する。軽減税率に加えて打ち出したポイント還元、プレミアム商品券、自動車や住宅購入時の減税措置などの対策規模は約2兆3千億円。増税による家計負担増(年2兆円程度)が当面帳消しになる額だ。

 こうした対策のアナウンス効果で、駆け込み需要はかなり抑制されている。減税措置により増税後も購入費が大きく変わらない自動車は、19年上半期の国内新車販売が前年比0・8%増にとどまる。住宅も増税後にローン減税や給付金が拡充されるため「購入を急ぐ動きはほぼない」(住宅メーカー)という。

 それでも増税が庶民の財布に痛手となることに変わりはない。家電や家具では駆け込み購入の動きがあるほか、生活雑貨はこれからの直前期に本格化するとの見方もある。増税対策も多くが時限措置のため、期限切れ後に時間差で消費を冷やす恐れがある。

 財政健全化や社会保障の強化に避けて通れない増税だが、今回はタイミングも良くない。増税は消費減少の影響を吸収できる「景気の上り坂」で迎えるのが理想とされるが、12年12月から続くとされる「戦後最長の景気拡大」(内閣府)は息切れ気味だ。

 内閣府がまとめた8月の消費動向調査によると、向こう半年間の消費者心理を示す消費者態度指数(2人以上世帯、季節調整済み)は11カ月連続で悪化した。小売り大手幹部は「アベノミクスによる物価の伸びに賃金が追い付いていないことに加え、社会保障などの将来不安が影を落としている」とみる。

 世界経済も米中貿易摩擦の出口が見えず、輸出の低迷に円高の進行が追い打ちを掛ける。米債券市場では8月14日、景気後退の予兆とされる長短金利の逆転現象が起きた。日本経済を取り巻くリスクは着実に高まっている。

 SMBC日興証券の宮前耕也氏は、増税の景気への影響について「駆け込み需要がさほど出ておらず、影響は前回ほど大きくならないだろう。ただ消費が伸び悩む状況が続き、厳しい局面になる可能性はある」と指摘する。

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