デモ激化、燃える香港 炎、催涙弾…まるで戦場

西日本新聞 総合面

 【香港・川原田健雄】香港中心部で31日、「逃亡犯条例」改正案の撤回や普通選挙実施を求める大規模デモが行われた。警察は許可せず、主催団体は中止を発表したが、自発的に集まった市民らが敢行。一部が香港政府本部に向けて火炎瓶やれんがを投げるなど過激化し、警官隊と衝突した。79日間続いた2014年の民主化デモ「雨傘運動」を超えて抗議活動が続く香港。混乱の街を歩いた。

 午後3時すぎ、香港島の中心街セントラル(中環)。インターネットの呼び掛けで「デモ出発点」とされた公園には、土砂降りの雨にもかかわらず、若者から中高年まで幅広い層の市民が詰め掛けていた。「香港人、頑張れ!」「自由のために闘おう」。デモ隊は声を張り上げ大通りを西へ向かう。人の波が複数の幹線道路を埋め尽くした。

 雨がやんでも参加者の多くは傘を差したまま。デモは、14年8月31日に中国政府が香港政府トップを選ぶ行政長官選挙で親中派以外の立候補を排除する決定をしたことにちなんで計画された。この決定が雨傘運動につながっただけに、雨傘には今度こそ成果を上げようという決意がこもる。

 「写真を撮られるぞ。傘を開け!」。突然、前方から大声が飛んだ。上空にドローンが見えた。警察による監視だ。「傘は警察から身を守る意味もある」と30代女性が教えてくれた。

 夕方、デモ隊は香港政府本部がある金鐘地区へ。本部近くのカフェに立ち寄ると辺りが騒然とし始めた。「催涙弾だ!」。店員が店じまいを始めた。刺激臭が鼻を突き、目が開かない。ペットボトルの水で幼児の目を洗う母親の姿も。

 ガスマスクとゴーグルを装着して政府本部前に向かうと、警察がデモ隊に銃口を向けていた。「パン、パン」とゴム弾や催涙弾の乾いた発射音が響く。警察の放水車が青色の水を発射する。過激な活動をした参加者の服に色を付け、後日摘発しやすくする狙いだ。

 若者たちも負けじとれんがや火炎瓶を次々と政府本部に向けて投げつける。警察車両の近くで炎が上がる。まるで戦場だ。親族と参加した男子中学生(13)は「暴力を振るっていない参加者にも警告なしでゴム弾を撃ってきた。警察のやり方は許せない」と憤った。

 デモが本格化して約3カ月。参加者には疲労の色もにじむ。警察との衝突で負傷した人の救援活動に取り組むクレイさん(23)は「みんな疲れている。交流サイトでデモ以外の話を発信する友人が増えた」。家族がレストランを営むダニエルさん(22)によると、この3カ月で客は3割減った。「7割減った店もある。デモがあと半年続くと閉店せざるを得ない。でも雨傘運動のように中途半端に終われば悔いが残る」。デモには参加し続ける覚悟だ。

 香港政府は強硬姿勢を崩さず、抗議活動の出口は見えない。大学生のテルさん(21)は「条例改正はただのきっかけ。普通選挙の実現までは頑張りたい」と意気込む。ただ、香港の高度な自治を認めた一国二制度は2047年まで。そう指摘すると、しばらく黙ってつぶやいた。「先のことは分からない。今は目の前のことをやるだけ」

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