消費増税まで1ヵ月、業界奔走 新レジ未着手4割 自腹ポイント還元も

西日本新聞 一面

 10月1日の消費税率10%への引き上げが1カ月後に迫った。様子見をしていた商店や飲食店は軽減税率に対応したレジへの切り替えに大慌て。キャッシュレス決済のポイント還元では、対象外となる大手の一部が客離れを防ごうと独自の「還元策」に走る。小売業には政府の支援対象になるために減資する会社も相次ぎ、「増税前夜」は混乱気味だ。

 「注文殺到しているためレジスターの設定受付を停止しております」。事務機器販売の日本機器(大阪市)は、ホームページ上にこんな注意書きを出した。

 今回の増税では初めて軽減税率が導入される。対象品は酒類を除く飲食料品と定期購読の新聞。異なる税率の商品が並ぶことになるため、多くの店ではレジ更新が必要となる。

 日本商工会議所が5~6月に実施した調査では、回答した事業者の約4割が新レジ導入「未着手」だった。中小企業庁によると、こうした事業者がここに来て一気に動いており、設置に数週間かかるケースもあるという。

 レジ更新が間に合わなければ、店は税率8%と10%の商品を選別し、別々に計算しなければいけなくなる。埼玉県深谷市のスーパー「ハーズ」の吉岡正市社長は「設置時期は未定。何とか間に合わせたい」と悩ましげだ。

■中小還元参加2割

 電子マネーなどキャッシュレス決済のポイント還元制度は中小事業者の店舗が対象で、大手は恩恵にあずかれない。

 危機感が強いのは外食大手だ。個人経営などの飲食店に比べて不利になる。しかも外食の「ライバル」である弁当など持ち帰りの飲食物は軽減税率の対象で、税率8%に据え置かれる。まさにダブルパンチだ。

 牛丼チェーン「吉野家」は客離れを防ごうと、全店で2%分のポイント還元を実施する。1200店のうちフランチャイズ(FC)店は制度の対象で、還元分は国が補助する。だが店舗の約9割は対象外の直営店。還元分は自社負担だ。

 一方で恩恵にあずかれるはずの中小事業者の動きは鈍い。経済産業省へのポイント還元制度の参加申請(8月29日時点)は全国で約51万店。約200万店とされる対象の2割強にとどまる。

 20~60代の消費者の6割超がポイント還元を「気に掛ける」と答えた民間の調査結果もあり、大手の対抗策が進めば、出遅れた中小の飲食店や小売店が割を食いかねない。

■減資で補助対象に

 中小事業者は政府の補助を受けられる。大手は体力がある。板挟みの中堅企業には、政府のポイント還元制度の対象になるため、要件である資本金5千万円以下に減資する動きがある。帝国データバンク福岡支店の調べでは、1~7月に減資した九州・沖縄の小売業は計36社に上る。

 福岡県内を中心にスーパーを展開するハローデイ(北九州市)は6月、資本金を1億円から半減させた。広報担当者は「ポイント還元制度を活用し、顧客離れを防ぎたい」。北部九州を中心にドラッグストアを展開する企業担当者も「キャッシュレス決済を呼び水にした他店との競争は激しい。後れを取りたくない」と減資の理由を明かす。

 政府の複雑な経済対策が招いた珍現象。日本総研の山田久主席研究員は「減資はいざというときの体力を落とすことになり、望ましくない。政策のゆがみが生んだ副作用だ」と指摘する。

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