内定辞退率の販売 就活生に対する裏切りだ

西日本新聞 オピニオン面

 就職活動中の学生の動向を勝手に分析してランク付けし、本人が知らないところで、そのデータを企業に売り渡す。考えただけでぞっとするようなことが実際に行われていた。

 提供された情報の使われ方によっては、本人が不利益を被ることもあり得る。就職という社会人への入り口で、人生が左右されかねないデータが、十分な説明もなく売買されていた。言語道断である。当事者は個人情報保護の責務を重く受け止めるべきだ。

 就職支援サイト「リクナビ」を運営する求人広告大手、リクルートキャリアのことだ。

 サイトに登録した学生の閲覧履歴などを基に、それぞれの「内定辞退率」を予測し、企業に販売していた。人工知能(AI)を使い、学生がどの企業・業界の情報をどれくらい閲覧したかなどを集計・分析し、過去の内定辞退者の閲覧パターンなどと照らし合わせ、辞退率が高いか低いか算出していたという。

 辞退した理由は人それぞれで異なるはずだ。現象面で似ているから、とAIに判定されるなど迷惑な話でしかない。

 分析した約7万5千人のうち約8千人からは第三者への情報提供に同意を得ていなかった。同社は残りの人には同意を得たと主張するが、会員登録時の文書に「採用活動補助のため」に企業に情報提供することがあると記載しているだけだ。内定辞退率のような形での提供を想定した学生はいなかっただろう。

 個人情報保護法は、本人の同意なしに個人データを第三者に提供することを禁じている。政府の個人情報保護委員会が同社に是正勧告し、説明不十分として指導したのは当然だ。

 リクナビは就職支援サイト2強の一つで、多くの学生が利用している。利用者らは、個人情報の扱われ方について、情報収集の必要に迫られ気が回っていないか、適切に管理されているはずだと信頼しているか、いずれかだろう。そうした学生に対する裏切り行為と言えよう。

 企業38社が辞退率の提供を受ける契約を結び、34社がデータを得ていた。人材確保を巡る苦労は理解するが、こうしたデータの安易な利用は自重自戒すべきだ。契約企業は「合否判定には使っていない」と口をそろえるが、不信感は拭えない。

 リクナビのケースに限らず、インターネットやスマートフォンの普及に伴い、「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT企業が、利用者からさまざまなデータを集め、ビジネスに活用している。個人を特定できるデータの収集や活用は、本人への十分な説明と同意が前提だと、改めて指摘したい。

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