大崎事件2次・3次最高裁決定 再審棄却 同じ判事関与 識者「公正中立さ欠く」

西日本新聞

 鹿児島県大崎町で1979年に男性の変死体が見つかった大崎事件の第3次再審請求審で、殺人罪などで服役した原口アヤ子さん(92)の再審開始を取り消す最高裁決定(今年6月)を出した池上政幸裁判官が、2015年の第2次請求の最高裁決定にも関与していたことが分かった。元被告や遺族が何度でも請求できる再審は、一度担当した裁判官が再び審理を担っても違法ではないが、識者からは「同じ裁判官が繰り返し担当すれば裁判の公正さを欠く。再審法制の不備が招いた盲点と言える」との指摘が出ている。

 第3次請求の最高裁決定は、鹿児島地裁と福岡高裁宮崎支部の再審開始決定を取り消し、原口さんの再審請求を棄却。地裁、高裁の開始決定を最高裁が覆すのは初めてとみられ、九州・沖縄8県の弁護士会や全国の刑事法学者100人が(1)前例のない決定で手続き的にも結論も不当(2)無辜(むこ)の救済という再審制度の趣旨を没却するものであり、著しく正義に反する-などとする抗議声明を出している。

 一方、第2次請求の最高裁決定(15年2月)は、再審請求を退けた高裁決定に対する弁護団の特別抗告を棄却した。2次も3次も最高裁は第1小法廷が担当し、ともに決定は「全員一致の意見」。小法廷は裁判官5人で構成され、池上氏だけが重複して関わった。

 最高裁のホームページによると、池上氏は1977年に検事任官。法務省刑事局刑事課長、最高検公判部長、大阪高検検事長などを歴任し2014年に退官。同年10月から最高裁判事を務めている。

 刑事訴訟法は一審や二審の公判を担当した「前審関与」の裁判官が上級審の審理に関わることを禁じているが、再審請求審はこの規定の対象外とした1959年の最高裁判例がある。

 今回のケースについて、元東京高裁部総括判事の門野博氏は「第3次を担当するに当たり、池上氏の大崎事件に関する心証は白紙ではなく、しかも検察出身で刑事裁判に精通していることから影響力は大きい。(3次の)審理が公正中立さを欠くことは否定できない」と指摘。再審事件の審理については不明確な点が多いことから「証拠開示の問題などを含め、再審法制の整備を急ぐべきだ」と話す。

 大崎事件で同じ最高裁判事が2度の決定に関与したことについて、最高裁広報課は西日本新聞の取材に対し「個別の事案については答えられない」とし、一般論としても「法解釈に関する事項で答えられない」と述べた。同様の事例の有無については「統計的なデータがない」と説明した。

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【ワードBOX】大崎事件

 1979年10月15日、鹿児島県大崎町で男性=当時(42)=の遺体が自宅横の牛小屋から見つかった。県警は義姉の原口アヤ子さん(92)と元夫ら親族計4人を殺人や死体遺棄の疑いで逮捕。原口さんは一貫して否認したが81年に懲役10年が確定し満期服役した。95年に第1次再審請求。2002年に鹿児島地裁は再審開始を認めたが、福岡高裁宮崎支部が取り消し、第2次請求も退けられた。15年の第3次請求では地裁と高裁宮崎支部が再審開始を認めたが、最高裁が今年6月、取り消した。

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