熊本 24歳刑事「過労自殺」 遺族、公務災害申請へ

西日本新聞 社会面

 熊本県警玉名署の刑事だった渡辺崇寿(たかとし)巡査=当時(24)=が2017年9月に自殺したのは長時間労働による過労が原因だったとして、遺族が近く、公務員の労災に当たる公務災害の認定を地方公務員災害補償基金熊本県支部に申請する。関係者によると、亡くなる直前2カ月間の時間外労働は当直勤務も含めると月平均120時間を超え、強い心理的負荷を受けていたという。

 遺族などによると、渡辺巡査は12年4月に県警に採用され、17年4月から玉名署刑事課に配属された。亡くなるまでの5カ月間の時間外労働の月平均は約96時間。同じ部署の平均(約81時間)を上回り、最長だった。県警は当直勤務を労働時間としてみなさない運用をしており、当直勤務を含めた時間外労働は117~167時間に及ぶという。

 「昨日は腐乱、今日は当直で縊死(いし)」「書類はたまる一方。キャパをオーバーしてますが言えません」「明日も見えない」「寝る分にはアルコールと眠剤があるんで大丈夫」-。携帯電話に残された無料通信アプリLINE(ライン)の記録には精神的に追い詰められた状況が残されており、17年9月に福岡県内で自殺しているのが見つかった。

 遺族は熊本県警に職場環境の調査を要請。納得のいく説明が得られなかったため、熊本地裁玉名支部に証拠保全手続きを申し立てた。同支部は証拠保全を決定。県警からは、勤務時間簿など労働時間に関する書類や、署による原因調査の結果などが提出された。

 署の調査では、渡辺巡査にトラブルはなく、自殺に至った要因の一つとして「刑事課員の常態化している長時間勤務」が挙げられた。県警は「職員が亡くなったことは誠に残念。ご冥福をお祈りするとともに、ご家族にお悔やみ申し上げる」とコメントした。

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■残業5カ月平均130時間 「疲れたような顔怒られる…」

 「毎日のばく然とした不安のせいです。死んで地獄にいくのも怖いですが、消えてしまうのも怖いです。しかし、明日がくることがもっと怖いのです」。熊本県警玉名署の渡辺崇寿巡査=当時(24)=は2017年9月、そう書き残して命を絶った。母美智代さん(59)=同県宇城市=は「正常に考えることができないほど働かされ、追い詰められていた。どうして誰も助けてくれなかったのか」と訴える。

 美智代さんによると、警察官だった夫の影響もあり、渡辺巡査は中学生のころから刑事を志した。17年4月、念願の刑事課勤務になると「頑張るから」と連絡があった。命を絶ったのは、その5カ月後だった。

 渡辺巡査の部屋は、足の踏み場もないほどごみが散乱していたという。「きれい好きな子だったのに…。寝る時間もろくになかったのだろう」。刑事課配属後の時間外労働の月平均は、当直勤務を含めると130時間超。若手だったことから多くの業務を抱え、孤立を深めていたとみられる。

 携帯電話に残されたラインの記録には「人前や、別室に呼ばれて怒られる」「疲れたような顔をすると怒られる」など、上司から叱責(しっせき)されていたことがうかがえる内容もあった。

 ただ、署幹部の説明は「原因は分からない」「責任ある仕事は任せていない」というものだったという。署の調査の結果には「休むことができない真面目な性格」「悩みを素直に吐露できない性質」「思い描いていた刑事生活と現実とのギャップ」などにより、「将来を悲観して自殺を図ったと思量される」とも書かれていた。

 「息子は弱いから亡くなったんじゃない」と、美智代さんは訴える。「二度と同じような人を出さないため、責任をはっきりさせたい」

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