アイドル編<434>歌謡曲バー

西日本新聞 夕刊

安東とリクエスト用のシングルレコード(スポットライト天神店で) 拡大

安東とリクエスト用のシングルレコード(スポットライト天神店で)

 福岡市中央区の歌謡曲バー「スポットライト」の天神店にはシングルレコードが中古レコード店のように並んでいる。お客はそこからお気に入りの一枚を抜き出してかけてもらう、リクエスト方式だ。

 店内には月間のリクエストランキングボードがある。渡辺美里の「マイ・レヴォリューション」(1986年)をトップに、中森明菜の「ディザイア」(同)、浅香唯の「C-ガール」(88年)などがベストテン内に顔を出している。店のコンセプトの一つはいわゆる80年代のアイドル歌謡である。

 この店を始めたのは代表の安東暢昭(51)である。2007年にオープンし、現在は福岡に2店、東京に2店を展開している。

 「時代で言えば、1960年から70年代生まれで、今の40歳代から50歳前半の人を主なターゲットにしています」

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 安東は福岡市生まれで、地元の大学を卒業後、東京の大手企業に就職した。起業を考えたのは30代半ばころだ。そのころ耳にした中学、高校時代の親友の言葉がふくらみ始めた。

 「親友は、中高時代に私が録音して贈ったカセットテープの音楽がいつも懐かしい、と言っていました」

 安東は音楽好きで、就職しても時折、遊びとしてクラブのDJをしていたこともあった。ソウル系の店という選択肢もあった。

 「ソウルだと趣味の延長線でしかない。歌謡曲はある時代を思い出す広がりのある扉だ。その扉を開けてリフレッシュしてもらい、40代、50代をどう生きるかを少しでも考えてもらえれば」

 店のポイントはシングルレコードだ。LPレコードは高価で、シングル盤を買った世代でもある。音もいい。安東は全国の中古レコード店を回り、1000枚を超えるシングル盤を買い集めて準備した。

 「当時のオリコン20位内で、20万枚売れたレコード」

 これが収集の基準だ。安東の言葉を借りればその世代の「共通言語」になる、より普遍性のある歌謡曲に絞り込んだ。

 リクエスト曲に合わせて同じ振り付けで合唱する客に一体感が生まれる。見知らぬ者同士が歌を通じて青春時代の初恋や交友など、当時のささやかであるが、生き生きしていた日々について語り合う-安東が創(つく)り、創ろうとしている空間だ。

 80年代のアイドル歌謡とその後について九州に縁のある歌手などを中心に紹介したい。

 =敬称略

 (田代俊一郎)

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