災害ボランティア、なぜ必要? 被災者の聞き役も、効率だけじゃない存在 生活再建への一歩後押し

西日本新聞

 西日本豪雨に台風21号、北海道南西部の地震と、今年7月からだけでも、大きな災害が相次いでいる。

 発生から2カ月がたった西日本豪雨は被害が甚大で広範囲だったために、家屋の土砂出しや片付けなどを担う災害ボランティアの活躍がまだ続いている。

 九州からも休日に自費で被災地に通う個人や団体のボランティアがおり、頭が下がる思いだ。現地で活動する支援団体からは、「被災直後に比べてボランティアが減っており、まだまだ作業も残っているので人手は足りていない」という情報がある。

 涼しくなってから被災地に向かうという方もいるかもしれない。リピーターの方もいるかもしれない。災害ボランティアをするのが初めての方もいるかもしれない。

 装備や具体的な活動のノウハウに関する情報はネット上にも充実しているが、気持ちの面ではどんな注意が必要なのか。(三重野諭)

 8月、福岡県が災害ボランティアに興味がある人向けのセミナーを開いた。登壇者の1人は「震災がつなぐ全国ネットワーク」事務局長の松山文紀さん(46)。阪神大震災をきっかけに被災地支援に関わるようになり、各地の水害や地震などで生活再建に取り組んでいる被災地支援のベテランだ。

被災者の気持ちを知ると、活動に丁寧さが加わる

松山さん:災害の発生は防げない。災害が起きると、行政は被災した人を全力で守る。人命を守る。行政の責務だからだ。ただ、最近は行政の力を大きく超える災害が起こっている。税収や人員が減り、行政の力も弱っている。行政も被災する。普段からぎりぎりの運営だと立ちゆかなくなる。

 被害範囲によっては行政だけではとても追いつかない。元々、行政は平等に大掛かりに支援することは得意。だけど個々に応じたきめ細かな対応は苦手だ。ボランティアには行政とも業者とも違う効果がある。  

ポイントは被災された方々の気持ちを知っておくこと。活動に一つ丁寧さが加わり、寄り添うようなサポートができる。

 被災された方は「まさか自分が」「何で自分だけ」と落胆している。どこにもその気持ちをぶつけられない人もいる。命が助かっても、家の中が土砂だらけ。何から手を付けていいか分からない。受け止めることで精いっぱいの方もいる。

 「もしかしたら、この地域はもう住めないんじゃないか」。生活の見通しが立たず、漠然とした不安と戦う人がたくさんいる。西日本豪雨の被災地にも、再建に向けて動き出せてない方がまだいる。

決して「ごみ」とは言わない

 周囲と自分の被害を比べてしまい、「そんなに被害がないから、ボランティアに来てもらったら申し訳ない」「見ず知らずの人に手伝ってもらうのは心苦しい」。お願いしている立場だけに、細かい注文ができなという人もいる。「ボランティアに来てもらうのに(依頼主の)自分が休んでは申し訳ない」と1カ月間休まなかった方もいた。

 被災した家にあったのは財産だったもの。何一つ要らないものはなかったはず。しかし、アルバムやノートといった修復ができるものも「もういいです。全部捨てて下さい」というような心理状況になる。

 でも、それらは決して<ごみ>ではない。ボランティア活動で、廃棄する際は「<この家財><この道具>をどうしましょうか」と聞く。大事なものを<ごみ>とは言わないように意識付けをしてほしい。

 自分の状況を誰かに聞いてほしいという方もいる。被災からどれだけ大変だったか、どれだけ不安だったか、ボランティアなら聞ける。もし話してくれるようだったら、自然と聞き役になれる。効率だけではない点にボランティアの価値や尊さがある。支援を受けた人の声を一部紹介したい。

・一人で途方にくれていたけど、片付けをやってくれて生きる希望が湧いてきた。
・若い人たちが泥だらけになりながら、見ず知らずの自分の家を片付けてくれて元気をもらった。
・家も仕事も失ったけど、人の温かさを知ることができた。
・被災した者同士じゃ話せないことも自然と話せた。

 被災から生活再建までは長い道のりがある。まず(屋外、道路などでの)家までの導線の確保、家財の片付け、住宅の清掃、乾燥、消毒、家財の運び入れ―。被災された方で、その行程を知っている方はほとんどいない。行程のうちボランティアセンターという仕組みで関わることができるのはわずかで、その後が長い。

 それでも、ボランティアが家の土砂を片付けるだけでも、「もうこの家には住めない」と思っていた人が、「もしかしたら、またここで暮らせるかも」と思うようになる。生活再建へ歩み始めることができる効果がある。「私のところにこの人が来てくれたんだ」と、落胆から希望が見えることもある。

ボランティア側の都合をセンターに押しつけない

 災害が起こると、自治体に災害ボランティアセンターが立ち上がる。運営の多くは社会福祉協議会が担う。地域ごとに違う組織がやる場合もある。

 センターの役割はボランティアと被災地の「助けてほしい」というニーズをつなぐこと。働きたい人と人を雇いたい企業をつなぐような、ハローワークに似ている。

 ボランティアをする側は、センターなど現地にできるだけ負担を掛けないのが原則。現地の貴重な医療体制を使わないように、体調管理に気をつける。

 受け入れ側の事情も考慮する。例えば、ボランティアを差配するのにも人手がいる。受け入れ態勢の面で、人数を限っているセンターもある。日程も決まっている。「自分はわざわざ遠くから来てるから」と長く働きたくても、それはボランティア側の都合。押しつけないでいただきたい。

 センターはボランティアがいない時にも仕事をしている。早いところは午前7時から、遅いと午後9時まで動いているところもある。道路事情が悪いところは、センターまで通うのに2時間かかるところもあった。運営側は苦労しながら、ボランティアに気持ちよく活動してもらえるように対応している。

被災者の「つらさ」に思いをはせられるのがボランティア

 医療、福祉、子育て、重機の操作など、専門の技能や知識があるとボランティアに生かせる場合もある。軽トラックが運転できる、軽トラックを持ち込める方を特に歓迎するといったケースもある。

 センターではボランティアの数がオーバーしていたり、足りなかったり、いろんなパターンがある。需要と供給がマッチしていない。連休中や土曜日、多い日は受付で待たされることもある。ただ、ボランティアの数は右肩下がり。差配する人がいないと、受け入れられない。

 どこの被災地でも必ず聞く言葉がある。「忘れられるのが一番つらい」。ボランティアセンターはいつか閉まるけれども、人々の生活再建はその後も時間がかかる。その中で皆さんにできることは、忘れないこと。現地に何度も行けなくても、あの人はどうしてるのかな、と現地を思うことだけでも、実はその方のためになっている。

 世の中がどんどん変わっていくのに、自分の生活だけ元に戻れない、そういうつらさに思いをはせられるのがボランティアだ。

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