そっくり人形 宿る思い 「大切な人、まるでそこに」 佐賀の江口さん久留米で個展

西日本新聞 社会面

 目尻のしわやふっくらと盛り上がった頬、生き生きとした表情は今にも動きだしそうだ。佐賀市兵庫町の人形作家・江口美千代さんは20年にわたり、300体以上の「そっくり人形」に命を吹き込んできた。先立った夫、事故で急逝した息子、離れて暮らす生まれたばかりの孫-。大切な人の姿を残したいという、全国からの願いに応える。

 江口さんは1980年から手作り人形教室を運営する。「娘のウエディングドレス姿を残したい」という女性の依頼でそっくり人形に挑戦。作品に喜ぶ姿を見て「そっくり」を追求するための試行錯誤を始めた。

 布に綿を詰めただけのものから、顔や手の表面を紙粘土で包み細かいしわや凹凸を表現するようにした。衣服は、よく身につけていた衣類の端切れを使用。指の一本一本に針金を入れ、湯飲みを持ったり編み物をしたりと、印象的な場面を再現できるようにした。

 「似ているだけでなく、まるでそこにいるような、その人の空気感を演出したくて」。制作期間は1~2週間。価格は5万円から。

 佐賀県小城市の伊東逸代さん(68)は7年前、母松千代さんの人形を依頼。その後、母の容体は急変し、亡くなる3日前に完成した。葬儀で人形を飾ると、弔問者から「生きているみたい」と喜ばれたという。

 伊東さんは「亡くなる数日前、親孝行できなかったこと、時には冷たくあしらったことを謝ったら『いいのよ』と。人形を見ると温かい気持ちを思い出せる」と目を細める。「人形にはその人の魂も家族の思いも詰まっている」と江口さん。

 3~8日に福岡県久留米市東町の一番街ギャラリーで作品展がある。そっくり人形のほかに昭和の懐かしい風景を再現した人形など約50点を展示。

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