漱石の「二百十日」舞台の阿蘇散策 足跡巡るツアー開催

西日本新聞 熊本版

 明治の文豪、夏目漱石の小説「二百十日」ゆかりの地を巡るツアーが1日、小説の舞台となった阿蘇市であった。漱石は120年前のこの日、噴火活動が活発化していた阿蘇中岳の火口見物に向かった体験に基づき執筆した。参加者はその足跡を実際に歩き、それぞれに思いを巡らせた。

 福岡市から参加した女性教員(61)は、定年後も中学校で国語を指導する。漱石と同じように前夜、内牧温泉に宿泊。ジオパークガイドの案内で阿蘇神社に参拝後、漱石が通ったとされる里道を歩いた。

 漱石の小説では「坊っちゃん」「吾輩は猫である」「草枕」などが教材に使われる。「二百十日」を教材に使ったことはないが、圭さん、碌さん2人の会話が落語風につづられており、「そのユーモアを追体験したかった」という。

 大分県から参加した50代夫婦は、漱石生誕150周年を記念して2年前に開館した漱石山房記念館(東京都新宿区)を訪ねた際、ツアーを知った。妻は高校時代、教科書で「こころ」を読んだが「大人になって読み返すと、違った読後感がある」と言う。旧制五高(現在の熊本大)の英語教員だった漱石の小説には、熊本の場面も多く「今後もゆかりの地巡りを楽しみたい」と話した。

 ツアー後には、漱石に詳しい小野友道・熊本大名誉教授の講演もあった。

 小説のタイトル「二百十日」は、厄日や不穏の予兆を意味する。小野さんは、この小説が日露戦争翌年の1906(明治39)年に発表されたことに着目。「あの時代、日本は戦争に勝つが、庶民の生活は困窮。国家と社会の分離が進み、人々は欲望を増大させ、経済的利益追求の風潮が強まる。時代の先行きを憂える漱石の思想が、この小説からは読み取れる」と話した。

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