九州大雨被災の名物レゲエ居酒屋、励ましの声に再開決断 一時は閉店検討も「あと30年続けて」

西日本新聞 社会面

 九州北部の記録的大雨で被災した飲食店主の中には店舗の再開と廃業の間で揺れ動く人がいる。多額の投資が必要になる可能性があるためだ。佐賀県武雄市のレゲエ居酒屋「ナフナフ」のオーナー古賀学さん(45)は、17年続いた店を閉じることも考えたが、励ましの声に再開を決断した。店名はジャマイカの言葉で「たくさん」の意味。「お金はないが、たくさんの人に支えられている。たくさんの人が幸せになる店をやる」と再起を誓う。

 古賀さんは高校卒業後、印刷会社に就職。会社の先輩に紹介されたバーでジャマイカを発祥とする音楽「レゲエ」に魅了された。友人とレゲエグループ「ラムヘッドサウンド」を結成。県内外のクラブなどでイベントを開催、国内外の著名アーティストと共演したこともある。

 脱サラしてレゲエ居酒屋を開いたのは29歳の頃。「レゲエを知らない人でも気軽に楽しめ、仲良くなれる場所をつくりたい」。開店と同じ年に結婚した妻尚子さん(44)と力を合わせ切り盛りした。

 古賀さんが選んだ曲が流れ、ジャマイカの郷土料理「ジャークチキン」などの多国籍料理も人気。音楽ファンやミュージシャンを含め県内外から多くの人が訪れた。「別々のお客さんでも仲良くなれるように」と客同士を紹介し、結婚したカップルも少なくない。

 8月28日早朝。知人からの電話で被災を知った。床上1メートルまで水に漬かっていた。水が引き、店に入れたのは翌29日昼。約千枚のレコードやスピーカーなどは駄目になり、厨房(ちゅうぼう)機器が汚泥にまみれていた。あまりの惨状に「頭が真っ白」。しばらく、動くことすらできなかった。

 普段は気丈な尚子さんの涙に「店を畳むか」との思いが頭をよぎった。会員制交流サイト(SNS)で被災状況を発信すると、「何かできることがありますか?」と多数のメッセージが寄せられた。音楽仲間や常連客延べ70人以上が片付けに駆け付けた。「『あと30年続けてもらわないと困る』と言う常連客もいた。そんな人がいるのにやめられない」と思い直した。

 市によると、被災した市内の数十の飲食店が休業を余儀なくされている。ナフナフも数百万円を見込む再開の費用や休業期間中の生活費をどう工面するか、課題はある。しかし、多くの人に愛された店を失うわけにはいかない。「今は大変だけど、この苦労を乗り越え、たくさんの人が集まる場所を取り戻したい」

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