九州大雨1週間 油流出被害を重い教訓に

西日本新聞 オピニオン面

 九州北部を襲った記録的な大雨から1週間が過ぎ、被害の全容が明らかになってきた。

 家屋や田畑などの浸水被害は深刻で、復旧や生活再建への道のりは長期化も予想される。

 今回とりわけ目を引いたのは佐賀県大町町(おおまちちょう)の冠水被害だ。有明海に注ぐ六角川が氾濫し、田園地帯が浸水した。佐賀鉄工所大町工場から約5万リットルとみられる工業用の油が流出し、約1キロ離れた順天堂病院で孤立した患者らの救援活動にも影響した。

 油の流出は、昨今の大雨被害の中でも極めて特異といえる。ところが今回の一帯は浸水被害が歴史的に多く、1990年にも同じ工場から油が流れ出している。油槽がある床を高くするなどの対策を取ったが、雨量が想定を上回ったという。

 引火性はガソリンなどと比べかなり低い油とされる。それでも何らかの原因で発火していれば、一帯が惨事になった可能性も否定はできない。現在でも、油が付着した家財などが災害ごみの仮置き場に山積みされており、発火の危険性が懸念される。厳重な警戒が必要だ。

 工場側の油の管理に瑕疵(かし)はなかったのか。法令上の問題を含め徹底した検証が求められる。

 大町町は建物用途の種類が制限される都市計画区域になっておらず、住宅や工場が混在している。他の自治体でも教訓となる被害である。災害時の備えとして、油や危険な化学物質などの存在も頭に入れておきたい。

 河川管理の在り方も問われよう。六角川の流路はいびつで、U字形に大きく蛇行している。一見して、洪水時の処理能力は十分かと疑わせるほどだ。

 九州・山口では「非常に激しい雨」(1時間50ミリ以上80ミリ未満)の降る回数が80年代の約1・4倍に増えた。地球温暖化の影響ともみられる。

 六角川に限らず、直面する「豪雨の時代」に見合った対策が課題となる。下流域での地下貯水施設の整備といった流域全体で膨大な雨量を制御する方策がさらに必要だ。避難計画などソフト面の充実も欠かせない。

 佐賀県内では大町町を中心になお250人余の住民が避難生活を強いられている。「いつ自宅に帰れるのか」という不安に加え、疲労やストレスは増す一方だろう。感染症対策をはじめ心身の医療的ケアが大切だ。

 被災者のニーズは刻々と変化していく。既に多くのボランティアも現地に入っている。ルールに従った支援を心掛けたい。

 今回の大雨による死者は福岡、佐賀両県で計4人に上る。その進路はまだ定かではないが、台風13号も北上している。新たな災害に十分警戒しながら、支援の輪を広げていきたい。

PR

PR

注目のテーマ