母子手帳で傷つくことも…低体重のわが子、不安抱える親 サポートする「親子手帳」広がる

西日本新聞 くらし面

 子どもが低体重で生まれると、どう育っていくのか、親は大きな不安を抱えがち。こうした「低出生体重児」をサポートしようと、母子健康手帳(母子手帳)と同様に常に携帯してもらい、わが子が一歩一歩、少しずつ発育、発達していく様子を記録したり、先輩からのアドバイスを読んだりできる冊子を作る動きが、各地で広がっている。

 福岡県は、県内の親子向けに2010年に作成した「小さな天使 親子手帳」の使い勝手を改善しようと、リニューアルを決めた。親たちでつくる「Nっ子ネットワーク カンガルーの親子」(事務局・同県筑紫野市)代表の登山万佐子さん(49)は「いつでも書き込みたくなり、子育てに自信が持てるような冊子に生まれ変わってほしい」と期待する。

 ●母子手帳で傷つく

 低出生体重児は、出生時の体重が2500グラム未満の子どもで、福岡県内では出生人口の約1割に当たる4236人(2017年)。最近は医療技術の発達もあり、1000グラム未満で生まれる子もいる。登山さんの長女(12)も出産予定日より早く、わずか452グラムで生まれ、生後半年を新生児集中治療室(NICU)で過ごした。

 母子手帳は母子保健法に基づき、妊娠を届け出た後、市町村から発行される。出産以降も健康や保健指導の状況を記録するもので、成長曲線などのグラフは子どもの平均的な身長、体重に基づいた形式だ。

 低出生体重児は体重を書き込む欄がなかったり、発達のチェック欄に「できていない」という箇所を選ぶしかなくなったり「ただでさえ動揺し、自分を責める親も少なくないのに、手帳を見てますます落ち込んでしまう」と登山さん。

 当事者家族の悩みを打ち明ける場としてNっ子を立ち上げた登山さんは、熊本県で低出生体重児向けの冊子があると伝え聞いた。福岡県の親子手帳は、Nっ子の親たちが当時、医療や保健指導の窓口だった県に要望、作成されたものだ。

 同県は年間約2500部を発行し保健所などで配布。ただこうした窓口が市町村に移行された13年度以降、必ずしも当事者全員に行き渡らず、冊子を知らない親もいるとみられる。

 ●育児不安が和らぐ

 昨春、静岡県が親たちのグループと連携し、同様の冊子「しずおかリトルベビーハンドブック」を発行した。登山さんは、各地で冊子の発行にかかわる国際母子手帳委員会事務局長の板東あけみさんと知り合い、実物を見せてもらった。

 A5判の福岡県の冊子と異なり、市町村発行の母子手帳と同程度のA6判。「市販の母子手帳ケースに入るサイズで、お薬手帳も含めて持ち運びやすい。中身もカラフルで見ただけで気持ちが優しくなるかわいいデザイン。何より書き込みたくなる」(登山さん)

 配布の対象は原則、低出生体重児の中でも長期的なフォローが必要とされる1500グラム未満の子どもと家族。成長と発達の記録欄には「頭を一瞬持ち上げる」などきめ細かい反応や動作を挙げ、「できたその日」を記入できる。起こりやすい疾患の解説や「先輩ママ」からの応援メッセージもある。登山さんは福岡県に、あらためて「親目線」の冊子の作成を要望。今年2月の県議会で、知事がリニューアルを表明した。

 静岡県の冊子は厚生労働大臣賞を受賞。板東さんによると冊子は名古屋市、埼玉県川口市でも作られた。いずれも行政が発行し、子どもがNICUに入っている段階で配られるという。「究極の目標は育児不安への対応と、そこから派生するネグレクト(育児放棄)など虐待の予防。自責の念と強い不安感で涙が止まらない母親も少なくなく、精神的に支えていくことが非常に重要です」と意義を語る。

 ●支援者にも伝える

 低出生体重児の中には、障害があったり、人工呼吸器の使用など医療的なケアが必要になったりする子どももいる。静岡県の冊子には、こうしたケアの内容を記入する欄もあり、登山さんは「福祉サービスを使うときなど、支援者側も一目で分かる。こうした形式も統一された冊子を医療、福祉、母子保健に携わる人すべてが知り、活用することで、その価値や効果も広がるのでは」と考えている。

 「当事者、支援者さまざまな立場の人と検討を重ねてリニューアルしてもらえればうれしい」。先輩からのメッセージ集めなど、Nっ子としても積極的に協力するつもりだ。

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