香港の抗議活動 対話による解決を目指せ

西日本新聞 オピニオン面

 香港で約3カ月続く、市民による大規模な抗議活動が一つの節目を迎えた。

 引き金となった「逃亡犯条例」の改正案について、香港政府トップの林鄭月娥(りんていげつが)行政長官が撤回を正式に表明したからだ。

 条例が改正されれば、香港当局が拘束した犯罪容疑者を中国本土に引き渡すことが可能になる。自由な言論やライフスタイルに対する抑圧が本土並みになるのではないか。これを警戒する若者らが中心となり、激しいデモや抗議を展開してきた。

 林鄭氏は6月、改正案審議を先送りし、事実上廃案にする意向を表明したが、デモ参加者の不信感は拭えなかった。空港が占拠され、中高生が授業をボイコットする事態にまで陥り、社会混乱を招いていた。

 香港政府の今回の判断は遅きに失した感がある。ただ、後ろ盾である中国政府の意向を無視できない現実もある。香港政府がようやくメンツにこだわらず譲歩をするに至ったことは、今回の混乱を穏健に収束させる方向への転換点と評価したい。

 しかし、事態は予断を許さないと考えるべきだろう。

 林鄭氏は改正案の撤回について「市民との対話の基礎をつくるため」との認識を明らかにした。「中国政府も理解と支持を示した」と述べたという。

 一方、デモ参加者の中には徹底抗戦の構えを崩さない人々もいる。「行政長官の普通選挙」など、さらなる民主化を求めて行動を続けている。

 今回の香港政府の譲歩を受けて、抗議活動が全体として沈静化に向かうのかどうか。ここが当面の焦点となるだろう。香港政府だけでなく中国政府も注目しているはずだ。

 香港の人々が享受する自由を守るためにも、対話による解決を目指すよう訴えたい。政府側は、今回の抗議活動が一部の活動家だけでなく幅広い市民層の関心と理解を集めた事実を直視すべきだ。そして市民側にも、暴力を辞さない過激な行動を慎むよう求めたい。

 今回の抗議活動は、香港が中国に返還された1997年以降で最大規模となった。背景には返還後50年は守られる約束の「一国二制度」が形骸化する現状への強い危機感があった。

 香港の自由と民主化を求める人々の声は、共産党一党独裁の中国では受け入れ難い面があるのも事実だろう。実際、中国政府は香港の隣接地に武装警察を集結させるなど力で抑え込む構えも見せた。

 中国政府は今、建国70年を祝う10月1日の国慶節を控え、国内の安定を内外に示したいはずだ。ならば、香港政府に市民との対話を促すべきである。

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