紅白出場歌手も…神社の夏祭りに大物が毎年出演、なぜ? 下積み時代の絆、今も

西日本新聞 筑後版

 こぢんまりとした神社の夏祭りに、いろんな大物演歌歌手が毎年出演している。こんな話を聞いて出掛けてみた。7月下旬に久留米市三潴町の大犬塚玉垂宮であった「よど祭り」。今年は柳川市出身の人気歌手、北山たけしさん(45)がステージに立った。過去には新沼謙治さんや冠二郎さん、伍代夏子さん、島津亜矢さんもやって来た。いずれもNHK紅白歌合戦の出場経験がある。なぜこんな豪華な顔触れを呼べるのか。謎を探った。

 気の早い秋の虫が鳴く夏の夜。地元住民が玉垂宮の境内に手作りした「よど祭り」の舞台に、北山さんが登場する。ヒット曲「兄弟連歌」などを披露すると約500人の見物客は拍手や声援を送った。遠くから足を伸ばしたというファンもいる。川野夏美さん(39)も歌った後、2人で物販コーナーに移り、CDを求める人と握手や談笑をした。

 ふと気付くと、北山さんと親しげに話す男性がいた。三潴町の西田善行さん(71)。少しこわもてのこの人こそ、演歌歌手たちを招いているキーマンだという。

 祭りの後、深く話を聞くために、北山さんと川野さんを囲む宴席に参加した。出演した理由を北山さんに尋ねると「西田さんのためならよろこんで引き受けますよ」と即答された。「若い頃に大変お世話になったので」

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 西田さんは久留米市梅満町で演歌専門レコード店「サウンドシアターフィール」を営む。店内のCDは2万枚を超え、全国の演歌ファンから「幻の1枚」を求めて問い合わせが来る。

 西田さんは1985年の開店当初「ただ店で待っているだけでは売れない」と考えた。若手歌手を呼んで歌ってもらい、その場でレコードを売る地方興行を主宰するようになった。

 一般的には、歌手の所属事務所が興行主に営業をかけ出演料などを交渉する。だが西田さんは、ある歌手の新曲が出ると、レコードを売るため自ら事務所に興行への出演を依頼。ベテラン、若手は問わず旅費や食費を負担して九州に招待した。「歌手になった誇りと喜びを感じてほしい」。そんな思いを抱く西田さんの元には、曲をPRする機会の少ない若手が自然と集まるようになった。

 コンサートの会場は、公民館にスーパー、カラオケ教室と、えり好みしなかった。ただ控室や音響機器、照明などは妥協せず、歌手に最高の舞台を用意した。「実力主義の厳しい業界で若手たちは本当に頑張っていた。その姿を見て、とにかく売れてほしいという一心で走り回った」

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 西田さんの評判は全国に広まり出演依頼は急増。1日に16公演をこなすこともあった。「1人の歌手が1曲で5千枚売るのは難しい」と言われた当時、西田さんの店だけで1曲5千枚を売る驚異的な数字も記録した。「1店舗での売り上げは日本一になった」と振り返る。

 北山さんも下積み時代、西田さんに育てられた。

 「誰も自分のことを知らず、歌う場所も無かった私を、西田さんが支えてくれた。新人の私にもプロの歌手としてきちんと接してくれた」。北山さんは西田さんの人柄に打たれた。「歌が駄目なときは叱ってくれる。西田さんのおかげで今の自分があるんです」

 西田さんは「苦しい時期を知っている歌手が立派になって戻ってくるのはうれしい」と目を細める。「演歌界は人気が低迷し、苦しい状況が続く。でも歌を披露する舞台は提供し続けたい」。演歌歌手たちとの絆は祭りのにぎわいとともに、これからも続いていく。

 サウンドシアターフィール=0942(37)4118。

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