文改革の顔、皮肉な対決 法相候補と捜査指揮の検察総長 脱腐敗の看板に傷も

西日本新聞 国際面

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、娘の不正入試疑惑などを抱えるチョ国氏の法相就任を強行すれば、不正一掃を掲げる政権の金看板に傷が付き、保守系野党の追及も勢いづきそうだ。韓国メディアは7日未明、検察が私文書偽造罪でチョ氏の妻を起訴したと報道。捜査を指揮するのは、文氏が検察改革を託して起用した尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長だ。文氏の側近で次期大統領候補とも目されるチョ氏の命運を文氏肝いりの検察トップが握り、検察もまた不正一掃の本気度を世論に試される。文氏にとって皮肉な構図となっている。

 「チョ氏に(法相就任を)辞退させるための手段を選ばないやり方だ」。韓国の聯合ニュースは6日、一連の疑惑を巡って8月27日に強制捜査に乗り出した検察を批判する大統領府関係者の声を匿名で伝えた。

 一方、検察総長の尹氏自身は5日、強制捜査に否定的な発言を続ける大統領府と与党に対し「捜査介入してはならない」との声明を発表。韓国メディアによると、強制捜査は法務省や大統領府にも事前報告がない異例の対応だったという。

 文政権は2017年、朴槿恵(パク・クネ)前大統領の親友、崔順実(チェ・スンシル)被告の国政介入事件などを厳しく糾弾する民意に押される形で誕生した。尹氏は16年、同事件を捜査する特別検察官のチーム長を務め、今年7月に高検トップを経験せずに検察総長に就任する異例の抜てきを受けた。就任時、大統領府報道官は「社会に残る不正腐敗の根を抜き、検察改革を完遂することを期待する」と文氏の思いを代弁した。

 文氏が検察改革を担うもう一人の「顔」として8月、法相候補に指名したのがチョ氏だ。しかし、ほどなくチョ氏にまつわる数々の疑惑が浮上し、文政権の「公正社会の実現」の金看板が揺らぐ事態に陥った。チョ氏はかつて、朴政権の閣僚に疑惑が浮上すると、会員制交流サイト(SNS)で「どんな顔をして捜査を受けるのか」などと批判。クリーンな改革者の印象が強かっただけに、世論の失望感は強い。

 文氏は、長く権力との癒着が指摘されてきた検察を改革するため、チョ氏に政治家や官僚らの不正を捜査する新組織を創設させる腹づもりだ。検察から独立して起訴権などを持たせる方針で、ある法曹関係者は「検察の権限が弱まるのを嫌う勢力が、強制捜査を通じて政権をけん制している可能性もある」と明かす。

 政権、検察双方の思惑がちらつく中、世論の反応と捜査の行方次第では政権に深刻な打撃が及ぶ懸念もあってか、文氏は法相起用に関する目立った発言を控えている。 (ソウル池田郷)

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