韓国地方議会 反日あらわ ソウル、釜山など続々条例 少女像設置に法的根拠

西日本新聞 総合面

 【ソウル池田郷、釜山・前田絵】韓国のソウル市議会と釜山市議会は6日、特定の日本企業を「戦犯企業」と定義し、製品を購入しないよう市や市教育部門に努力義務を課す条例案を可決した。公共機関から日本製品を排除しようとする動きは地方行政や議会に広がっており、日韓関係の悪化は深刻度を増している。ただ、条例に罰則はなく、日本企業への実害は不透明だ。

 菅義偉官房長官は6日の記者会見で「不適切で不合理な主張に基づきわが国の企業を不当に非難し、経済的不利益を及ぼし得る内容で、極めて遺憾だ」と反発した。

 両市の条例はいずれも、戦時中に朝鮮半島出身者を強制動員などで働かせたとして三菱重工業など284社を「戦犯企業」と定義。公式謝罪や賠償をしていないとし「戦犯企業の製品を公費で購入しないよう努力しなければならない」と規定した。

 韓国メディアによると、忠清北道議会が2日に同じ内容の条例を可決するなど他の地方議会でも動きが広がっている。ただソウル市は「自由貿易の原則に反し、国内法にも違反する可能性が高い」と反対の立場を示し、韓国外務省も両市に「憂慮」を伝えていたとされる。日本の対韓輸出規制強化を受けて韓国政府が準備する世界貿易機関(WTO)への提訴にも影響を及ぼすとの懸念も出ている。

 また、釜山市議会は6日、慰安婦問題と元徴用工問題を象徴する少女像と徴用工像が在釜山日本総領事館そばの歩道に置かれている問題に絡み、市が道路上に設置を許可できる対象に「歴史的事件を記念するための銅像や造形物」を加える条例改正案を可決した。

 市民団体が設置した総領事館そばの少女像や徴用工像は現在、道路法違反の状態だが、今回の条例改正で合法化される可能性が高まった。

 二つの像について、日本政府は外国公館の「安寧と威厳」を守るよう定めたウィーン条約に違反するとして、韓国側に撤去を求めている。

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首長、議員 政権と足並み

 韓国の地方行政から日本製品を排除する動きが広がっている。首都ソウル市議会と韓国第2の都市、釜山市議会が6日、「戦犯企業」と定義した日本企業の製品を購入しないよう市などに努力義務を課す条例を制定したことは、国内で続く日本製品の不買運動に拍車を掛けかねない。背景には、文在寅(ムンジェイン)政権と足並みをそろえ、対日強硬姿勢をアピールしたい地方議員や首長の思惑があるとみられる。

 釜山市の条例案は、与党「共に民主党」の市議が主導して発議。提案理由を「釜山市民の日本戦犯企業に対する警戒心を高め、正しい歴史認識の確立に貢献するため」とし、全会一致で可決した。

 日本と距離的にも近く、日韓交流が盛んなことで知られる釜山市だが、「共に民主党」に所属する呉巨敦(オゴドン)市長は7月23日、市が主管する日韓交流事業を全面的に再検討すると発表した。翌24日に文大統領の釜山市訪問を控えたタイミングで「与党所属の市長として政府と歩調を合わせた」(韓国紙記者)との見方が広がった。

 一連の条例を巡る動きについては、地方議会側の前のめりの姿勢が目立つ。条例の効果に懐疑的な韓国政府や自治体との温度差も見受けられ、国内には結果的に「勇み足」となることを懸念する声が少なくない。

 韓国メディアによると、「共に民主党」に所属する朴元淳(パクウォンスン)氏が市長を務めるソウル市も懸念を表明。韓国政府が日本の輸出規制強化を受けて世界貿易機関(WTO)への提訴を準備している現状を踏まえ、市は「今後、外交紛争や通商摩擦で日本側に(有利な)口実を与えかねない」との立場だ。韓国内の自治体では過去にも同様の条例化の動きがあったが、国内で批判が相次ぎ成立しなかった。

 日本外交筋は「長く韓国経済に貢献してきた日本企業を“戦犯”と呼ぶことも含め極めて不適切だ」と不快感を示した。 (釜山・前田絵、ソウル池田郷)

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