PTAを考える(1) PTAフォーラム詳報<上>任意加入 いま再び問う

西日本新聞 くらし面

全国のPTA関係者らが活発に意見を交わしたフォーラム 拡大

全国のPTA関係者らが活発に意見を交わしたフォーラム

 学校の教員と児童生徒の保護者の連帯組織である「PTA」。所属や活動への参加は任意であるはずなのに「参加を強制された」「同調圧力を受けた」など不満や疑問の声は絶えない。特命取材班にはこれまでに100件以上の声が寄せられている。

 本紙教育面では昨年6月に「PTA改革」を特集。負担軽減や任意加入制、組織の廃止といった各地の取り組みを紹介した。一方で新年度になると「何も変わらない」「役員決めの会合が恐怖」といった声が再び相次ぐ。

 なぜPTAの構造は変わらないのか、もっと当事者の声を聞きたい‐。そんな思いを膨らませていた中、PTA問題に関心のある全国紙や地方紙の記者有志が実行委員会をつくって開く「PTAフォーラム」の存在を知り、取材班メンバーも加わった。

 8月24日、神戸市で開かれたフォーラムには全国から約100人が参加。できることからどう現状を変えていくか、前向きな議論が交わされた。フォーラムの様子を詳報し、九州の事例も踏まえ、改めてPTAを巡る問題を考えたい。

退会も自由なはずなのに

 フォーラムでは、任意団体であるPTAの入り口論が活発に議論された。強制加入の問題だ。「入退会は自由」と規約に明記されるケースはまれ。「子どもが卒業するまでに役員をしなければならない」「役職に応じてポイントが付く」といった「慣例」が常識化している現状が報告された。

 大阪府吹田市の女性は5年前、長男の小学校入学を前にママ友から「PTAは早く終わらせといた方がいいよ」と言われた。学校から配られた時間割などが書かれた「学校ハンドブック」にも、PTAは原則加入とあった。何の疑問も抱かず入会届に記入して提出したという。

 長男が2年になるころ、加入は任意と知った。シングルマザーで2人の子どもを育てるためにアルバイトを重ねる。とてもPTAに割く時間はない。今度は役員の辞退届に「全く余裕がない。辞退できないのなら退会したい」と書いた。

 当時の会長から電話がかかってきて、仕事やひとり親は辞退理由にはならず、退会手続きも前例がないと再考を求められた。女性はPTAへの不満ではなく、家庭の事情を強く訴えた。「親としてできることはする。でも、もし役員を引き受けたら責任を全うできない」。会長も校長も最後は理解を示し、女性は学校で初めての非会員になった。

「まんじゅうプロブレム」

 入退会問題で近年、よく聞くワードに「まんじゅうプロブレム」というのがある。卒業式の際、PTA非会員家庭の子どもにコサージュやまんじゅう(祝い菓子)、証書入れなどを配布しないというもの。非会員家庭の子どもに対する不利益は今もあるのだろうか。

 「PTAをやめると言ったら学校から卒業式のまんじゅうをあげませんと。まんじゅうプロブレムに私も直面しました」。兵庫県西宮市の女性はそう打ち明けた。

 「任意加入を進めたいがPTAが担う集団登校の問題がある。任意加入にすると個人情報の関係で把握できない」と、PTA会長経験のある同県明石市の男性は投げ掛けた。

 卒業式の記念品代をPTA会費で賄う学校では、非会員家庭に実費を求める傾向が目立っている。PTA会費から支出せず、卒業生の保護者からその都度負担してもらうケースも。退会する際などに校長や会長が不利益を口にする例はあるが、非会員になったメンバーの多くは「今のところ差別はない」と語った。

慣例の常識化が壁に

 岡山市の弥重幹昌さん(52)は同市の小学校でPTA会長を務めていた2011年、入退会は自由とする原則を導入した。「共働き世帯が増える中、お母さんたちが役員決めでつらい思いをしていたり、活動しない人を陰で非難したりといった状況を変えたかった」

 それまではほぼ全員加入だったが、前期と後期に分けて入会届を提出した世帯から会費を個別に集める運用に変えた。会費を下げたこともあり、当初は約9割の世帯が加入した。

 弥重さんは「会長の前に役員を2年経験し効率化の手応えはあった。それでも改善には4年かかり、他の学校にまでは広がっていない」と、改革の難しさを強調する。この学校では今も任意加入のまま加入率は95%を切っていないという。

 一方、フォーラムでは来春、子どもが小学校に入学する兵庫県の女性から「PTAが怖くて仕方ない。自宅に近い学校は非加入が1人もいない」と訴えがあった。女性は自ら手を挙げて子ども通う幼稚園の保護者会役員になったが、既存事業に意見するうち周囲から無視されるようになったという。パニックになり心療内科を受診した。

 弥重さんは「子どもの学校を変えることも考えていい。正体不明のものに立ち向かうのは愚か。我慢せず逃げられるのであれば逃げるのも手だ」と助言しつつ付け加えた。「PTAってね、PTAから離れた所ほど話は通じるものだよ」。硬かった女性の表情に笑顔が浮かんだ。

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