義足脱いだサッカー少年、夢のW杯に アンプティサッカー日本代表、星川さん

西日本新聞

 バルト海沿岸の港湾都市、ロシア・カリーニングラード。寒風が吹き荒れた10月7日、片脚や片腕がない人が杖(つえ)を使ってプレーする「アンプティサッカー」ワールドカップ(W杯)初戦のピッチに、日本代表星川誠さん(22)=福岡県宗像市=の勇姿があった。「十数年、義足でサッカーをやってきたことは無駄じゃなかった」。試合開始のホイッスルが鳴る前、星川さんは緊張感を解きほぐすように、冷たい風を深く吸い込んだ。

 アンプティサッカーはまだ、日本ではなじみの薄いスポーツだ。1チーム7人で、20~25分ハーフ。W杯のほか、来年は初めてアジア杯が行われるものの、日本ではクラブチームが四つ(東京、神奈川、三重、九州)だけでプレーヤーは計40人ほどという。

 生まれつき右膝から下がない星川さんとサッカーとの出合いは、小学3年のとき。友人に誘われ地元のチームに入った。義足の星川さんは特別扱いされることなく、週4日の練習に通った。「レギュラー争いに勝って試合に出たい」。原動力は負けん気だった。

 「Jリーガーになる」。人生の指針をそう定めた。しかし、進学先の東海大五高(宗像市)、九州共立大(北九州市八幡西区)で苦汁をなめた。激しい当たりで何度も壊れた義足。右足から左足への展開では、ほんのわずか「間」ができた。「真剣勝負のサッカーができない」。1年で大学のサッカー部をやめた。

 暗転からの脱却。「サッカー人生」の新展開は、昨夏にかかってきた1本の電話だった。「世界で一緒に戦おう」「もう一つのW杯に行こう」。義足でサッカーをする星川さんを知っていた、九州唯一のアンプティサッカーチーム「FC九州バイラオール」主将、加藤誠さん(29)=大分市=の声に、再び「サッカー魂」を揺さぶられる自分がいた。

 アンプティサッカーのルールで、試合では義足は使えず、支えは2本の杖だけ。転倒の恐怖、腕のしびれを持ち前の負けん気で克服、日本代表の座を勝ち取った。

 星川さんにとって初めてのW杯は世界の厚い壁を体感する場となった。日本代表は、5敗1分けで12カ国中最下位。「ボールを止める、蹴るといった基本的な技術も運動量でも及ばなかった」。特に大会3連覇を果たしたウズベキスタンには、「プレーの速さは健常者と戦っている感覚で、練習量の差を思い知らされた」という。

 来年はアジア杯、2年後にはまたW杯がある。「九州に複数のチームができるぐらいアンプティを広め、多くの選手と競い合っていきたい。それが世界の強豪に勝つ道です」

 世界に立ち向かう緊張感、そして日の丸を背負う責任感…。サッカーに魅せられた星川さんの前に、新たな地平が広がっている。 (三重野諭)

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