人間の原点を再確認する!ワタから糸や布をつくる全工程を体感できる絵本

西日本新聞

 読んでいる間、ずっと不思議な気持ちでいた。どこか、懐かしい。この懐かしさはどこからくるのだろう。

 本書は、農文協が出している「イチからつくる」シリーズの1冊で、今回取り上げられているのは、ワタ(綿)だ。表紙には、小学生くらいの女の子2人が描かれていて、かわいらしい絵本が好きな人なら、思わず手に取ってしまうだろう。一方、裏表紙には、素朴な風合いのミニマフラーの写真が載っている。絵本仕立てになっているが、このミニマフラーを作ろうというのが本書の主題だ。

 といっても、編み物の話ではない。イチからつくるのだ。畑にタネをまくところから。綿毛を収穫し、綿くり、綿打ち、糸つむぎ、染め、機織り……などの工程をすべて自分で行って、マフラーを仕上げる。それらがすべて絵や写真で図解されていて、女の子たちのストーリーに沿って、読者も「体験」できるようになっている。その気になれば、実践できるよう解説も本格的だ。

 言うまでもないが、生きていく上での基本は衣食住である。遠い昔から人間の生活とは切っても切り離せないものだったはずなのに、我々はいつしか服のつくり方を忘れてしまった。この本の女の子たちと同じく、「服は買うもの」と思っている。それでも、いわゆるDNAレベルで覚えているのだろうか。ワタから糸と布をつくる道具や作業の様子を見ていると、体の奥がゾワゾワしてくる。懐かしいような、ほっこりするような不思議な気分になる。

 著者は、幼稚園から老人ホームまで、さまざまな場所で糸つむぎのワークショップを行っているという。子供たちは大はしゃぎし、大人たちは無心になって「癒される」そうだ。本書を読んだだけでも、それに近い経験ができる。さらに、農作業や服作りの枠を超えて、もっと大きな世の中の仕組みについても目が向けられるような構成になっている。知的好奇心旺盛な子供へのプレゼントに最適だが、大人も一緒に読むことをおすすめする。

 

出版社:農文協
書名:イチからつくる ワタの糸と布
著者名:大石尚子
定価(税込):2,700円
税別価格:2,500円
リンク先:http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_54017163/

西日本新聞 読書案内編集部

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