被害者保護の「当番弁護士制度」導入を  遺族ら支援の弁護士が提唱

西日本新聞

 SNSなどで誰もが情報を自由に発信できる時代。被害者や遺族への心ない中傷やデマが一気に広がり、心の傷をえぐる。実名が一度ネットに出てしまえば完全に消すことは困難。投稿者を特定し、責任を追及するのも容易ではない。犯罪被害者支援に取り組む栗脇康秀弁護士(福岡市)は、逮捕直後の容疑者に無料で面会する「当番弁護士制度」の被害者支援版の創設を提唱している。

 被害者側を追い詰めるのは報道だけではない。匿名性の高いネット上や会員制交流サイト(SNS)では、報道内容をきっかけに、いたわりの言葉だけでなく中傷やデマも飛び交う。2016年7月に相模原市の「津久井やまゆり園」で入所者19人が殺害された事件の後も、障害者やその家族に対する差別的な発言がツイッターなどであふれた。

 栗脇弁護士は「報道されたいというニーズが一定あるのは事実だが、被害者ご遺族の意向を尊重して報道してほしい」と説く。

 11年に福岡市中央区のホテルで風俗店従業員が殺害された事件では、報道各社が女性の名前や職業をそれぞれ一部伏せるなどした。「A社が職業だけ、B社が名前だけ載せても、つなぎ合わせれば個人が特定される。そして、心ない言葉がワンクリックでネット上に拡散される」と栗脇弁護士。

 被害者や遺族の心理的負担を減らすための被害者支援版当番弁護士について、栗脇弁護士は「重大犯罪が発生すれば自動的に弁護士が被害者側の代理人に就き、対応を一本化できる制度の整備が必要」と訴える。

 事件直後、被害者側に取材が殺到するとショックを増幅させてしまう。そこで、代理人が素早く意向を聞き取って報道陣に伝えたり、コメントや顔写真の提供を仲介したりすることで、報道の過熱を防ぎ、被害者保護も期待できるという。

 栗脇弁護士はこう指摘している。「ネットが普及する前と後では、社会が全く変わってしまった」
(黒田加那)

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