【きょうのテーマ】人に役立つロボット開発 人手不足の現場に力 アイデアは身近に 「テムザック」(福岡県宗像市)を取材した

西日本新聞 こども面

「ロデムは車いすとちがい、立っている人と同じ目線になる」と高本社長(右) 拡大

「ロデムは車いすとちがい、立っている人と同じ目線になる」と高本社長(右)

人間そっくりの「デンタロイド」 20年ほど前に開発した「テムザック4号」 「ロデムのアイデアはこんな風に…」と説明する高本社長 テムザック本社は旧玄海町の役場だった建物を使っている

 少子化による人手不足などの理由で、さまざまな場所でロボットの導入が進んでいます。新しい発想で人の役に立つロボットを開発し、国内外から注目されている会社「テムザック」(福岡県宗像市)を第9期こども記者が取材しました。

【紙面PDF】きょうのテーマ=人に役立つロボット開発

 社長の髙本陽一さん(63)が社内を案内してくれた。台の上で女の人が横になっていて、ぎょっとした。髙本さんは「歯科医師を目指す学生が治療の練習に使う人間型のロボット『デンタロイド』です」と説明。皮膚は樹脂製で触ると柔らかい。音声を認識する機能があり、医師役の指示で口を開いたり、治療中に「痛い」と声も出す。

 人工知能(AI)を搭載し「2台でコミュニケーションを取って仕事をするロボットもある」。髙本さんは住宅メーカーの積水ハウスと共同開発したロボットの映像を見せた。1台が天井の高さに板を持ち上げ、もう1台がねじで固定する。人間には体力的に負担が大きい作業だ。髙本さんは「建設や農業など、高齢化や人手不足で働く人が足りない現場にこそロボットが必要」と力を込めた。

 ■介護に、観光に

 体の不自由な人、介護する人に便利なロボット「ロデム」を見た。車輪で走行し、スマートフォンで遠隔操作できる。ベッドや椅子から体の向きをあまり変えずに、自分で乗り移れる工夫もした。滋賀県の病院で実際に使われ、海外の大学や行政からの視察も多いという。私たちも試乗した。車体の後方からまたがるように乗り込む。ハンドル操作が簡単で、その場で旋回できるので部屋の中をすいすい動くことができた。

 ロデムは観光面での活躍も期待されている。多言語対応のタブレット端末を取り付ければ、外国人でも道に迷わず目的地に行ける。東京や京都の観光地で、使い勝手を確かめる実証実験をしたと聞き、路上で見かける日も近いと思った。

 ■発想から始まる

 髙本さんはロデムのアイデアを、椅子の背もたれを前にしてまたがり、テレビを見ていたときに思いついたという。「遠くに暮らす義理のお母さんを助けたい」と開発したロボットもあった。髙本さんは「世界中でまだだれも考えていないことって、案外身近にある」と考える。

 私たちは事前に考えたロボットのアイデアを発表した。天候に左右されず全自動で野菜を育てるビル型の巨大ロボット、切った髪を散らかさずに散髪してくれるロボットなどなど。髙本さんは楽しそうに耳を傾け、「うちのロボット開発も『こんなん作ろうや』という発想から始まる。大きな目標に向けて、たくさんの小さな発明をしていくことが大事です」と笑った。

 ●「挑戦か安定か 考えてみよう」 髙本社長に聞く

 髙本さんは技術者ではないが、テムザックの主なロボットのアイデアを考えてきた。「私のアイデアをもとに設計者が図面を書く。ロボットを必要とする現場は必ず自分の目で見に行く」という。気になる製造費用を尋ねると、「二足歩行ロボット『キヨモリ』の場合は3億円」と聞き驚いた。小型の留守番ロボットの試作機は2千万円かかったが、完成後は量産して30万円ほどで販売したという。

 会社を立ち上げる時に一番苦労したことを聞くと、「お金ですね」と即答した。ロボットを開発するには材料費や人件費がかかる。まだ目の前にないものに対して、お金を出してくれる理解者を集めるのが大変だったという。髙本さんは、馬車が常識だった時代に、自動車を開発したドイツ人技術者、ダイムラーを例に挙げた。今では信じられないが、自動車も最初は「そんなおもちゃどうするんだ」「危ない」と誰も相手にしなかったそうだ。

 「人類のためにリスクはあっても新しいことに挑戦するか。人と同じ事をして安定した人生を選ぶか。みなさんも考えて」。髙本さんの言葉が心に残った。

 ●わキャッタ!メモ

 ▼テムザック ベルトコンベヤーを作る会社を経営していた髙本さんが2000年に創業。従業員20人。宗像市の本社の他、京都市、横浜市、台湾、イギリスにも開発や生産の拠点がある。国内外50以上の大学、企業や行政とのネットワークを生かして技術開発をしている。

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