英国のEU離脱 延期し合意の努力続けよ

西日本新聞 オピニオン面

 議会制民主主義の模範とされた英国はどこへ行くのか。目を覆いたくなる混迷ぶりである。論議を重ね合意形成を目指す政治本来の知恵を示してほしい。

 欧州連合(EU)からの無秩序な離脱も辞さない構えを見せるジョンソン首相に議会が歯止めをかけた。現在10月末になっている離脱期限について、3カ月間の再延期をEU側に求めるよう首相に義務付ける法律が成立した。

 ところが首相は「この政府はこれ以上離脱を遅らせることはない」と言い放って、再延期の要請に難色を示し、議会を閉会してしまった。離脱問題の審議時間を削るための閉会とみられている。与党の造反議員を党から除籍するなど、強硬な政治手法ばかりが目立つ。

 首相が局面打開のために再提案した解散総選挙の動議も議会から否決された。完全な手詰まりであり、立法府の意思を尊重するのが道理だ。これ以上の「型破り」の言動は混乱を深めるだけである。

 首相が解散総選挙を望む背景には、EU離脱を巡る国民の意見が今なお大きく割れている現実がある。世論調査では与党保守党の支持率が最大野党を上回る。いま選挙なら保守党が第1党になるとみられている。

 確かに、総選挙や国民投票のやり直しが実現すれば、最新の民意の集約であり、この混乱を脱する選択肢の一つかもしれない。ただそれにはまず、EU側と離脱期限の再延期で合意し、現在の異常な事態を収拾することから始めるべきだ。それができるのは唯一、首相である。

 英政府は11日、EUとの「合意なき離脱」をした場合、想定できる最悪のケースをまとめた文書を公表した。物流の要である英仏海峡の通関に手間取り、物価上昇や医薬品不足を招き、抗議デモが多発する-などと指摘している。

 この文書は7月の現政権発足後まもなく作成されていたが、議会に追及されるまで公開していなかった。テーマとその内容を考えると、批判されて当然の対応である。

 首相は10月末までにEUと新たな合意を目指すと言うが、事実上、不可能だ。どんな混乱が起ころうと構わず「合意なき離脱」を望むのなら、それで英国が何を失うかについて情報を全て開示し、正面から同意を求める努力が欠かせないだろう。

 「合意なき離脱」は世界経済全体にとってマイナス要素である。EUは離脱後の悪影響に対する支援策を発表し、企業や市民に備えを呼び掛けている。英国の混迷に対するいら立ちも理解できるが、離脱期限再延期には前向きに対処してほしい。

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