魅力生かし利用者増を 山内進氏

西日本新聞 オピニオン面

福岡大商学部教授山内進氏 拡大

福岡大商学部教授山内進氏

 ◆銭湯の現在と未来

 10月1日からの消費税増税に伴い、福岡県の普通公衆浴場(銭湯)の大人の入浴料金を440円から450円に改定する審議がなされている。10年ぶりの値上げだ。

 ひと昔前、銭湯は内風呂を持たない人に対する入浴機会の提供の場としてにぎわったが、自家風呂の普及に伴い、施設数・入浴者数ともに減少の傾向にある。福岡県の内風呂の保有率は、2008年で96%を超えている。九州地域全体でも平均97%超だ。

 1982年、福岡県に432軒あった銭湯は、2018年3月は40軒と10分の1となった。九州全体でも、佐賀県1軒、長崎県17軒、宮崎県18軒、熊本県70軒、大分県148軒、鹿児島県284軒と決して多いとは言えない。このような状況だけをみると銭湯の未来は暗そうに見える。

 先日、番台に座るおかみさんと話をしたが、今でも、銭湯は地域住民のコミュニティーの場となっているのだとか。利用者は、入浴後もしばらくその場にとどまり、世間話に花を咲かせるという。

 忘れてはならないのが、昔ながらのペンキ絵やタイル。銭湯のアート性は魅力的だ。福岡では多くの銭湯に富士山が、熊本には大きな滝の絵が、鹿児島には桜島のタイルを楽しめる銭湯がある。

 経営者の人たちによる集客のための取り組みも忘れてはならない。いい風呂の日、しょうぶ湯等、創意工夫された試みがなされている。福岡には「温まるくん」というゆるキャラまでいる。

 銭湯の未来は、利用者をいかに呼び込めるかがポイントとなろう。手足を伸ばしゆったりと入浴できる広い浴槽は、地域住民への利用呼びかけの際の強みである。ジョギング後に利用する人、観光に立ち寄る外国人など、新たな入浴者の取り込みも必要だ。後継者問題は、経営したい人に引き継がせる仕組みの検討もすべきであろう。

 九州地域の立地や温泉設備など、情熱ある経営者が生み出す銭湯の“質”の違いを生かした取り組みは、人情ある利用者に銭湯の魅力として届くはずである。経営者の工夫が続く限り、銭湯の未来は明るいと信じている。

 子供の頃、両親に手を引かれ訪れた銭湯。近所のおばさんからもらったコーヒー牛乳は美味(おい)しかったなあ。人の優しさに触れ、心身とも温まった。銭湯には人の温かさがいっぱいあふれている。

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 山内進氏(やまうち・すすむ) 福岡大商学部教授 慶応大で博士号を取得し福岡大へ。客員研究員としてオックスフォード大に留学経験がある。税理士・会計士補。福岡県生活衛生営業審議会会長などを務める。

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