諫干最高裁判決 国の責任で「農漁共存」を

西日本新聞 オピニオン面

 国営諫早湾干拓事業(長崎県諫早市)の潮受け堤防排水門を開門するのか、閉じたままなのか。最高裁の判断は、対立する関係者の協議による解決を促すものだと読み取れる。最終的な解決には、協議の場を国が積極的に整える必要がある。

 最高裁は13日の判決で、開門を命じた確定判決を無効とした福岡高裁判決を破棄し、審理を差し戻した。

 排水門を巡っては、不漁をきっかけに2002年以来、複数の訴訟が続く。原因解明のため漁業者が求める「開門」と、それによる塩害を懸念した営農者が求める「非開門」という相反する司法判断が併存する。

 今回の判決は、その「ねじれ」を解消するかと注目された。担当した小法廷は6月、別の訴訟2件で「非開門」の判断を示しており、今回も漁業者側に厳しい判決が予想された。それだけに漁業者側も「良識ある判断」と歓迎している。

 ただ最高裁判決は、福岡高裁での差し戻し審で、開門を命じた確定判決を国が求める通り無力化できる可能性を示唆している。漁業者側が従来の主張を維持するばかりでは、今度こそ厳しい判決につながりかねない。漁業者側の弁護団が今回「問題は和解による話し合いでしか解決しない」との見方を示しているのは、このためだろう。

 13日の最高裁正門前には「農漁共存の和解を!」と書かれた幕が掲げられた。この「共存」しか、この問題の解決はあり得ないのではないか。今回の判決を、有明海と沿岸地域の環境と農漁業にとって最良の方策は何か、関係者で話し合っていく転換点とするべきだ。

 諫早湾干拓はまさに国策である。その巨大公共事業の迷走によって「宝の海」が危機にひんし、沿岸住民の分断と対立を招いた。国はその事実を重く受け止めなければならない。

 所管の農林水産省は、不漁の原因解明につながる可能性もあった、確定判決の開門命令を拒み続けた。自ら紛争当事者になってしまった面すらある。

 司法による解決にはどうしても時間が必要で、もう20年近くもこの争いは続いている。現在の国は開門せずに100億円の基金を創設し、漁業環境改善を図る案で解決を目指す方針を変えていない。それに固執する限り、開門前提の和解を望む漁業者との溝は埋まらない。

 話し合いによる解決を実現するには、双方ともかたくなな姿勢を改めてほしい。塩害の心配のない開門の方法は本当にないのか。最新の知見や専門家の意見を取り入れるなどして、国は長年の紛争の出口を探るためのあらゆる努力をすべきだ。

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